26、しゃべる

「今度は何を買ってきたの?」

 晴天の庭。呆れつつ問う私に、コレクターの父は胸を張って答える。

しゃべるシャベルだ」

「はぁ?」

 一見するとただの大きなシャベル。

 大方予想はつくが、これがなんだというのか?

「このシャベルはな、土を掘るたびんだ」

 だろうね。

「まぁ見てろ!」

 すると父は意気揚々とシャベルに足を掛け、勢いよく地面に突き刺した。だが。

「喋らないけど」

 喋るシャベルは喋らなかった。ややこしいな。

「おかしいな?」

 父は一度シャベルを地面から引き抜き、再び突き刺す。

 だが。

「ダメじゃん」

 やはりシャベルは沈黙のままだ。

「なぜだ!」

 すると何を焦ったか、父は何度もシャベルを突き刺し始めた。

 と、その時。

「痛いです……」

 微かな声が聞こえた。

「誰?」

「シャベルです……」

「いや声ちっさ! なんでそんな声小さいん!?」

 私がツッコむと、シャベルはおずおずと答えた。

「喋るの苦手なんです……」

 まさかの名前負け。

 私は少し同情した。

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