26、しゃべる
「今度は何を買ってきたの?」
晴天の庭。呆れつつ問う私に、コレクターの父は胸を張って答える。
「
「はぁ?」
一見するとただの大きなシャベル。
大方予想はつくが、これがなんだというのか?
「このシャベルはな、土を掘る
だろうね。
「まぁ見てろ!」
すると父は意気揚々とシャベルに足を掛け、勢いよく地面に突き刺した。だが。
「喋らないけど」
喋るシャベルは喋らなかった。ややこしいな。
「おかしいな?」
父は一度シャベルを地面から引き抜き、再び突き刺す。
だが。
「ダメじゃん」
やはりシャベルは沈黙のままだ。
「なぜだ!」
すると何を焦ったか、父は何度もシャベルを突き刺し始めた。
と、その時。
「痛いです……」
微かな声が聞こえた。
「誰?」
「シャベルです……」
「いや声ちっさ! なんでそんな声小さいん!?」
私がツッコむと、シャベルはおずおずと答えた。
「喋るの苦手なんです……」
まさかの名前負け。
私は少し同情した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます