400字小説

案内なび

1、雀の木

 ある晴れた日の夕方。

 私は歩いて学校から帰宅していた。

 視界の右側では街路樹が立ち並び、その横を車が通り過ぎて行く。

 するとその時、「チュチュチュチュ!」という騒音が上の方から聞こえてきた。

 突然のことに心臓がドクンと脈打つ。

 反射的に見上げると、そこでは青々とした葉がただ風に揺られていた――ワケではなかった。

 目に映ったのは、大量のすずめが飛び回る姿。

 その所為でが揺れていたのだ。

「……なんなのよ、もうっ!」

 口では悪態をついたものの、不気味で異様なその光景を前に、私の足は小走りで駆け出していた。

 そして、目前の交差点に辿り着いた。――その瞬間。

 キキーッ、という甲高い音が聞こえたかと思えば、ガシャーン、という激しい衝撃音が後方から響いた。

 私は反射的に振り返る。

 そして、自らの目を疑った。

 前方が激しく損傷した自動車。その正面には、歩道の上に横たわる雀の木の姿があったのだ。

 けれど、雀の姿は一羽も見えなかった。

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