23、ウチの神様

「ずっと気になってたんだけどさ」

 ある日、私が箒で庭を掃いていると、娘が尋ねてきた。

「なぁに?」

「ウチってさ、何の神様を祀ってんの?」

 ――遂に聞いてきたか。

 我が家は代々神職を受け継いでおり、娘も巫女として修行を積んでいる最中なのだが、これだけはまだ教えていない。

 いや、正確には教えたくないのだ。

「ウチの神様はね、ちょっと特殊なのよ」

「特殊?」

「そう。事情があってね、教えられないの」

「ふーん……」

 私の言葉に娘は不満げな表情を浮かべたが、それ以上尋ねてくる事はなかった。

 私はほっと胸を撫で下ろす。

 娘にはウチの神を信仰してほしくないのだ。

 なんせは、神として尊敬されるよりも、母として慕ってほしいのだから。

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