3、本末転倒

 昔、丙丁へいてい村では、故人の命日に故人の好物を食卓に並べて、家族でそれを頂くという風習があった。

 ある日、某家で故人の十回忌が行われた。

 すると、法要が終了した時、一羽の鶏が迷い込んできた。

 亡き父の好物はビールと焼き鳥。

 それを思い出した息子は「丁度いい」と思い、鶏を捕まえようとした。

 だが、その鶏は暴れる事なく、すんなりと息子に捕まった。

 息子は不思議には思ったが、苦労せずに捕まえられたので、喜んで焼き鳥作りを始めた。






「おや、せっかく転生させてあげたというのに、もう死んだのかい?」

 神様は驚いた様子で私に問う。

「えぇまぁ。息子が私のためにお供え物をしようとしてくれたもので、それなら死んでもいいかと思いまして」

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