第2章 無言の二人そして屋台の灯り



披露パーティーの日。




彼と私は、肩を並べて会場へ向かった。




道の途中、屋台がいくつも並んでいた。

私は何も言えず、彼も黙ったまま。

ふたりのあいだには、まるで風のような静けさが流れていた。


やがて人が増えてきた頃、彼はふと私の手を取った。



他人の目を気にしてのことかもしれない。

それでも、私はその手のぬくもりを感じて、

嬉しいと思ってしまった自分がいた。



屋台の前で、小さな子どもが泣いていた。

取り損ねたアメをじっと見つめていた。


彼は、そっとその子にアメを渡した。

笑顔だった。


たとえそれが、ただの“優等生”としての振る舞いだったとしても、


私は、そんな彼の優しさが


――やっぱり好きだった。

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