第14話 幼獣奴隷

 中は酷い状態だった。

 泣き叫ぶ子供、仲間割れを起こし殴り合う者、出してと懇願する者、未来の希望というのを既に失っている者。そうした様々な人種が首輪を付けられ檻に入れられている。

 すると奥から人が駆けつける。どうやら奴隷商人らしかった。そいつは適当に"商品"の説明をしながらどうせ買わないだろうという目をルーク達に向ける。


「酷い有様だな。これでも商品なんだろ?」

「えぇ、まぁ、努力はしてますとも。」


 ヘラヘラと笑いながら奥ヘ奥ヘと進んでいく。

 進めば進むほど状態は酷かった。片足がない者、体が麻痺した者、病気の者。これほどまで酷いのかと目を疑うレベルだった。


「あ、あの子」


 ミヤが一人の獣族を指差す。犬のような、狼のような耳を持った茶髪の幼い女の子だった。

 特に目立った外傷はない。切り傷が四肢全体に広がっているぐらいだろうか。値段を見ると他の奴隷より10倍以上値段が低いのが気になる。


「あーあいt…ゲフンゲフン、あれは病気でして、我々ではどうすることも出来ずあのようになっております。」

「だから金貨50枚と安価なのか」

「えぇ、まぁあまりお勧めはしません。職業柄いろいろな土地へ足を運びますがそれでもダメだったので。」


 ミヤを見ると同情するような顔を見せている。


「………名は?」


 ルークが檻に近づき質問する。


「………」


 答えない、する気力がないといったところか。

 その姿にルークは一昔前の記憶を呼び起こす。

 ルークがミヤとシルタと出会う前、まだ食料があり正常な意識を保っていた頃、生きる気力をなくし、どうにでもなれと流れに身を任せ人との交流を全て絶った。その頃のルークの顔とよく似ていた。


「生きたいか?」

「…わ……わから、ない」


 絶望、希望、不安、安堵、心配…様々な感情が入り混じった顔と声。


「………このまま死にたいか?」

「――――死にたく…ない」


 まぁ、いいだろう。ルークは不死じゃなければその頃とっくに死んでいた。それと比べれば良いほうだとルークは手を伸ばす。


「【ヒール】」


 そういうと彼女の顔にあった痣などが消えていた。それと同時に病気も治る。


「…名は?」

「え?あ、カル、ナ…」


 カルナは何が起こったのか分からないまま答えた。


「こいつを買う。金貨50枚入った袋だ。」


 ルークは袋を取り出しそれを手渡す。


「まいどありー」


 そういうと同時に檻が開けられる。


「立てるか…?」


 ルークがゆっくり手を差し伸べる。


「…フルフル」


 カルナは首を横に振る。驚きで喋れないのか。それとも元から喋るような性格じゃないのか。それともまだルーク達を信用できていないのか。理由は分からない。それでもルーク達は優しく言う。


「俺はルーク」

「ミヤよ!私がいなかったら助けられてなかったんだから感謝しなさい!」

「ぼ、僕はシルタ…よろしく」


 それに対しカルナは首を縦に振る。

 そうしてカルナの体をひょいと持ち上げ背負う。

 そうして四人になった御一行は店を出る。


「獣族だろうし何か村について知ってるといいな」

「私、そんなの気にしてなかった…!」

「はは、ミヤらしいね。そういう突発的な所。」


 そうして四人は港へ出向いた。

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