かいがらテラス 他オムニバス

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 かいがらテラス




夏が過ぎ、もう海に人がほとんど来なくなった頃。


わたしは懐かしい喫茶店を探しに行った。


それは、私のふるさとにある喫茶店。

でも、本当のふるさとではなくて、

心の中で恋した想い出のふるさと。


ひと夏の恋…


人に恋をしたのか、シチュエーションに恋をしたのか、わからないくらい若い頃…


わたしはコットンの白いロングスカートと、

コルクの厚底のサンダルで、

歩いてその喫茶店をさがす…



かいがら通り1丁目、かいがらテラス…


海沿いのカーブした道を松の林に入った

砂地の喫茶店…


外にはアイスブルーのヨットがあって、

天板にガラスがはめてありヨットが

テーブルになっている…



あ、あった。


わたしは、アイスコーヒーと、

ブルーベリーチーズケーキをたのんで、

外のテラスのヨットテーブルに座った。


潮のかおりが鼻腔にぬけ、波の音が聞こえる。


あの時はみんなと来たな…



今日は、ひとり


わたしはマクラメ編みの小さなバッグから

昔の写真を出してながめた…


みんな若い!

お肌がパツパツ!

はじける笑顔がそこにあった



今も変わらない かいがらテラス を後にして、

わたしはバス停に戻った。


バスの車窓からまた、かいがらテラスを眺める…



するとそこはマンション建設地となっていて、

かいがら通りの、かいがらテラスは

もう見当たらないのであった…。



想い出の恋の記憶は、

心の中だけの記憶になった…。











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