ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜

@Nyafu0703

プロローグ

俺の名前は――**黒瀬悠斗くろせ ゆうと**だった。

どこにでもいる、ただの高校生。

勉強は普通、運動も普通、人付き合いも普通。

唯一、人より強く持っていたのは、「異世界に行きたい」という――現実逃避にも近い、強い願望だった。

ある日の帰り道。

ぼんやり空を見上げていた俺の前に、赤信号を無視して突っ込んできたトラックが現れた。

驚く間もなかった。

衝突音も、痛みも感じる暇はなく、視界が白く染まっていった。

そして――世界は、音も、重さも、色さえもない空間に変わっていた。

(……まさか、これが)

死、そして転生。

あまりにも“テンプレ”な展開に、俺は最後の最後で苦笑していた。

だが――意識が戻った瞬間、俺はすぐに“それ”を理解した。

目の前にあるのは、異様に大きな顔と、眩しい天井。

体が動かない。言葉も出せない。手足はぷにぷにと柔らかく、何もかもが小さい。

(……嘘だろ。これ、赤ん坊……!?)

まさかの「赤ちゃん転生」。

泣く声と、温かい手の感触。そして――優しい声が聞こえてきた。

母「この子、男の子よ! 元気な声……よかった……!」

父「レイ……そうだ、“レイ”と名付けよう。ノヴァリアの名を継ぐ者として」

女の人が、俺――いや、“レイ=ノヴァリア”を抱きながら、微笑んだ。

その瞬間、俺はこの世界で、二度目の人生を得たのだ。

――そして、十三年が経った。

魔法と剣、魔物と精霊が存在するこの世界。

俺はその中で、ひたすらに魔力を鍛え続けた。

毎朝の瞑想、昼の訓練、夜の魔力循環。

誰に教わることもなく、俺はただ、独りで強くなった。

結果――俺の魔力量は、国の上級魔導士すら凌駕し、

あらゆる属性の魔法を扱える“全属性魔導士”となった。

だが、それでも俺は満足していなかった。

もっと強くなれる。もっと、高みに行ける。

この力を、ただ持っているだけでは意味がない。

そんなある日――いつものように森を探索していた俺は、“それ”に出会った。

少女だった。

銀色の長い髪。薄汚れた白い衣。血の気のない顔と、細い体。

そして、長く尖った耳が――彼女がエルフ族であることを示していた。

レイ「……大丈夫か?」

声をかけても、返事はない。

魔力はかすかに流れている。命は、まだある。

俺は迷わなかった。

少女を抱きかかえ、そのまま森を後にした。

あの時の彼女の表情を、俺は今でも忘れない。

目を覚ました彼女は、俺に深く頭を下げ、そしてこう言ったのだ。

セラ「ご主人様、セラ=ノヴァリア、一生ついていきます……!」

名は、セラ=ノヴァリア。

その日から、彼女は俺の“メイド”として、一緒に暮らすようになった。

それが――俺、レイ=ノヴァリアと、

彼女、セラ=ノヴァリアの運命の始まりだった。

この出会いが、やがて世界を巻き込むほどの戦いへとつながっていくことを、

この時の俺はまだ、知る由もなかった――。

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