第7話勉強会

「空〜、今度のテスト勉強教えて〜」


放課後の教室で、あかねが俺の机に寄りかかりながら甘えるように言ってきた。


「またか。お前、前回のテストも散々だったもんな」


「ひどいな!でもマジでお願い。一人だと全然やる気でないんだよね~」


あかねが両手を合わせてお願いのポーズをしながらも顔をそらしている。仕方ないやつだ。


「わかった。じゃあ今日、うちでやるか?」


「やった!ありがとう空!」


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学校も終わり俺の家に帰ってきた。どうやら母さんも雪もいるようだ。


「あらお帰り。今日はあかねちゃんもいるのね」


「おかえり~。あかね姉もいるけどどうしたの?」


二人とも昔からの付き合いだからか急に連れてきた割にはあまり驚いてはいないようだ。やりやすいことこの上ない。


「あ~中間テスト対策しようと思ってな」


「すいませんお邪魔しま~す」


あかねも挨拶をしたらいつもやっているかのように俺の部屋に向かう。


「あ~もうそんな時期か~ゆっくりしてってね~、後でお菓子持っていくね~」


「今日はそんな長くやるつもりじゃないしいいよ母さん」


「あらそう?あかねちゃんも欲しいものあったら遠慮せずいってね~」


「は~い」


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「あ~もうわかんないー!!」


あかねはまだ勉強を始めて30分もたたずに音を上げてしまう。


「まだ勉強始めたばっかだろ」


俺は少し叱るように言う。こんな調子では勉強なんてやってられないからな。


「だってさ~高校入ってから勉強難しすぎない?中学とは全然違うじゃん」


「言ってることはわかるがお前は中学の勉強もままならなかっただろ」


「えへへ~ごめんね~」


とはいっても仕方ない部分もある。実際として中学と高校では勉強の難易度も勉強の仕方も全く変わってくる。あかねにとってはうちの高校は少しの上の難易度の高校でもあるから勉強についていくのは大変だと思う。


「はぁ~、で、どこがわからないんだ?」


「えっとね~こことこことこことここと・・・ここかな」


「ほぼ全部じゃねえか!!」


いやこれは勉強をさぼっているだけだな。甘やかすのはよくないことだ。さすがに授業をちゃんと聞いていればもう少しはできるはずだ。


「お前、授業ちゃんと聞いてないな?」


「いや~だって難しいし」


その難しいのをわかるようにするために授業はあるんだが...


「まあいいまずここはな・・・」


一つずつわからないものを教えていく。


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しばらく教えていひと段落した。あかねもちゃんと自分で考えられるようになってきた。


ちゃんと分かったのかパっーと笑顔になりこちらを振り向く。


「やったー分かったー!!」


「おーそれは良かったなー」


俺はもうかなり疲れて適当に返答する。これだけ喜んでくれることは教えてるこっち側もうれしいことではあるが。


「ありがとね~空」


「まあいつものことだからな」


「そうだね~中学の時から教えてもらってるもんね~」


あかねは感慨深そうに言ってくる。


「補修になったら顧問の先生に怒られる~って泣きついてきたからな」


「お恥ずかしい限りで」


なんだかんだ物思いにふけってしまう。こういう勉強会もいつの間にか恒例行事のようになってしまった。


「なんで空はいつもこうやって付き合ってくれるの?」


あかねが疑問そうな顔をしている。


「別に特にこれといった理由はないかな~。強いて言うなら大事にしてる幼馴染だし一緒にいて居心地はいいからな~」


なんとなく思ったことを口に出す。


「へ、へえ~そうなんだ~」


なんとも歯切れの悪い返事だ。顔をそらしてこっちを見てくれないし返答に不満があるのだろうか。


「じゃ、じゃあもう時間だし帰るね。」


「おう」


なんだかそそくさと帰って行ってしまった。


「あらあかねちゃんもう帰っちゃったの?一緒にご飯食べてけばよかったのに~。あんたなんかしてないでしょーね」


「なんもしてね~よ」


あかねの様子のことを考えると俺はなんかしてしまったのだろうか

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