第4話親友と

俺にとって晴人は中学からの付き合いになる親友だ。


晴人は明るいしスポーツ万能で嫌味がなく周りのことがよく見えていてコミュニケーション能力も高い非の打ちどころのない人間だ。もちろん友達は多いがよく俺に構いにくる。


正直俺が学校を不自由なく過ごせているのは晴人のおかげと思っていいだろう。本当にありがたく思ってる。本人が理解しているのかは知らないが。


そんな晴人が、今日は何やら気になるようだった。


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今日は曇りか...雨ほどいやではないがあんま気分が乗らないな...


HRの時間も終わりなんとなく憂鬱な気分で窓を覗いていた。


「おい空!一緒に帰ろうぜ、今日部活休みだからよ!」


ニシシと笑いながら声をかけてきた。あかねと光はそれぞれ部活があるので、今日は俺と晴人だけだ。


「あ~そうだな」


俺は荷物をまとめながら答えた。


校門を出て軽く買い食いしながら帰ってると晴人が何か不服そうに聞いてくる。


「なぁ~空。お前なんか部活やらねえの」


「いやめんどくさいからいいわ」


やっぱりなと思い正直に答える。何回も聞かれてるので回答内容がしょっちゅう変わるわけでもないから少々雑ではあるが...


「でもさ~もったいなくね?お前そこまで運動神経悪いわけでもないしたっぱもそこそこあるだろ。170後半くらいか?それにあかねと一緒に帰れるんだぞ。俺も光と一緒に帰ってるしな!!」


晴人は思ってるよりも不満そうである。そんな部活なんていいもんでもないと思うが...何より部活の中身について全然話してないじゃないか!!というツッコミはさておき真剣に答えないといけなそうだな。


「いや~な、運動が嫌いなわけじゃないんだがな。時間とられて余裕なくなるのは嫌なんだよ」


「余裕?そりゃ何のために?疲れたくないだけではなくてか?」


少し不思議そうに晴人は聞いてくる。


「誰かが疲れた時にもたれかかれるような人間が必要だろ。俺はそういう風な人間になりたいんだ。」


俺は少しくたびれながら答える。すると、晴人は真剣な表情で聞いてくる。


「それはあかねのことか?」


「それもある」


本題はそのことかと納得しつつもめんどくさいなと感じる。


「俺もお前のそういう部分に助けられてるけどよ...でもそういう理由ならなおさら部活するなりしてあかねと一緒に帰ったほうがいいんじゃないか?」


「いいんだよ。それにあかねには部活の仲間やそれ以外の友達との時間だって必要だ。俺ばっかかまってるってのはよくないよ。」


実際余裕を持つっていうのはあかねのためだけにやっているわけではない。自分でも余裕を持ってないとしんどいし俺はそういう人間になりたい。それだけなのだ。


「なんかお前ってめんどくさいな」


「うっせえよ」


晴人のおせっかいはまだまだ続く。


「そんだけ思ってんなら付き合えよ。光だって言ってるぜ?あんなに仲いいのにって。俺がこいつを幸せにしてやるんだ~ぐらい言えよ」


「はいはい、だから俺らはそういうのじゃないんだって。それにそういうのはあかねが可哀そうだろ。」


これも割と聞き飽きた言葉である。いつにもましてしつこい気がするが。


「だってよ~俺は心配なんだよな~。俺は中学からしか知らねえがずっとその感じだし。それに俺らはもう高二。高三になったら受験勉強やらなんやらで忙しくなるし大学行ったら今みたいな感じであかねといることはできなくなるぜ?いいのかよ」


「それはそうだけど...」


「お前がいいならそれでいいけどよ。ちんたらしてっと取り返しつかなくなるぞ。それこそちゃんとしないとあかねが可哀そうだしな。」


割とちゃんと心配して話してくれたようだ。いいやつだなホントに。


「そうは言われてもねえ」


「ま、今回のお節介はこんぐらいにしとくけどお前らのやり方でやっていけばいいさ。光なんて二人の関係が羨ましいって言ってるぐらいだしな。でもしっかり考えとけよ。」



そうは言われても難しい。ずっと一緒にいたから関係性を変えるのに忌避感もあるしどうしたらいいのかわからない。ただもう一回しっかり考えなければなとは思った。


「まっ俺は光がいるからどうでもいいけどな~ほなさいなら~」


「おう、また明日」


晴人は残ってるもの頬ばりながらあっけらかんとそのまま帰っていった。


今日の晴人はめんどくさかったがしっかり俺のことを考えてくれていることが分かった。


いい親友を持ったものだ。

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