【完結】隣の席の美少女留学生がBSS(僕が先に好きだったのに)される話
マウンテンゴリラのマオ(MTGのマオ)
第1話 ヒロインは留学生
「あなたのことが好きです。付き合ってください」
学園祭が終わる。夕日に染まる校舎の中で、告白がなされる。
「―――よろこんで」
そして告白が受け入れられる。新たなカップルの誕生である。
「……」
そんな彼らを、物陰から見つめる生徒がいた。その顔に浮かぶのは、深い悲しみ。
「―――僕が、先に、好きだったのに」
自らの恋が破れた瞬間を目の当たりにして、涙を流す。これはそんなお話。
◆◆◆
「ソニア・スペンサーです。よろしくお願いします」
始業式の日。
新たな教室、新たな顔ぶれ、新たな学年。
何もかもが新しいこの日、新たな生徒がこの学校に加わった。
「えー、スペンサーさんは、今年度から我が校で受け入れることになった留学生だ。日本語は日常会話と読み書きを一通り出来るが、日本の文化やら何やら含めて不慣れなことも多い。みんなでサポートしてやるように」
担任教師が紹介するのは、傍らに立つ一人の少女。
茶色の長い髪、蒼い瞳、白い肌、掘りの深い整った顔立ちと、見るからに日本人離れした容貌。制服が包む体は起伏に富んでおり、総じて外見的魅力に優れた少女であった。
ソニア・スペンサー。外国人の名前には詳しくないが、アメリカ人だろうか? それともイギリス人? 少なくとも英語圏の出身だとは思うが。
「じゃあ、そこの空いてる席に座ってくれ」
「はい」
担任に言われて、ソニアは鈴のような美しい声で返事をしてから、教室の奥へと向かう。一番後ろの窓際、そこが彼女の席だった。
「……!」
着席したソニアに、教室中の視線が刺さる。
留学生がやって来るなどそうそうあることではない。彼らが注目するのは当然のことだった。
「……」
そんな中、一人だけ我関せずを貫いている生徒がいた。ソニアの隣に座る男子だ。つまりは自分だった。
留学生が珍しいというのは理解できる。とはいえじろじろ見るのも不躾だし、同じクラスなのだから相手を知る機会はいくらでもある。
となれば必然、今するべきことは担任教師の連絡事項を聞き洩らさないようにすることである。
「……シダレ?」
しかし、ソニアが漏らした声を聴いて、彼女の方へ目を向けざるを得なかった。
『シダレ! やっぱりシダレだ!』
「……はい?」
こちらの顔を見て、ソニアは英語で声を上げた。
英語で話してくるのはそこまでおかしくはないが、問題は発言の内容だった。彼女はこちらの名前を呼んでいる。聞き間違えかと思ったが、二回も呼んでいるならそれはないだろう。
園田枝垂。それが自分の名前であり、この少女にはまだ名乗っていないはずなのだが。
『久し振り! 元気だった?』
『えっと……どこかで会ったっけ?』
親しげに話し掛けてくるソニア。そんな彼女に、自分も英語で問い掛けた。
とある事情で外国人との接点はなくもないが、同世代の女の子と懇意にした覚えはない。自分の名前はかなり珍しいし、他人の空似ということもないだろう。だったら、こちらが忘れているという可能性が高い。
『ソニアだよ! 六年前、この辺りに来た時、会ったでしょ?』
『あー……』
言われて記憶を遡る。そして、心当たりに思い至った。
『もしかして、観光案内所で話した子?』
六年前といえば、まだ祖父が存命だった頃だ。
当時、祖父は地元の観光案内所に務めていた。いや、務めていたというのは正確ではない。暇を持て余した祖父がボランティアをしていたのだ。
そんな祖父に連れられて、自分も案内所に顔を出すことが多々あった。
ここらは割と有名な観光地でもあるので、外国人観光客もたまにいた。祖父は英会話が得意だったので、彼が対応することも多かった。
その時、相手の家族に歳の近い子がいた時は、自分がその相手をすることもあった。祖父のお陰で英会話はそこそこ出来たし、どこから来たの? とか、何を見に来たの? とか、その程度の簡単な会話をしていた覚えがある。恐らくはその時の誰かだろうと当たりをつける。
『うん! 約束通り、また会いに来たよ!』
『約束……?』
ソニアの言葉に首を傾げる。外国人の子供と話した覚えはあるが、約束を交わした覚えはない。とはいえ、幼い子供が他愛もない約束をするのはよくあることなので、多分その類だろう。
『これからよろしくね! シダレ!』
『うん、よろしく』
約束に関しては覚えてなかったので深く追求しなかった。
周囲の目線も痛くなってきたので、適当なところで話を打ち切り、前を向くのだった。
「枝垂ー。帰ろうぜ」
始業式が終わって放課後になる。
その直後、声を掛けてきたのは友人の
髪を茶色く染色した、ちょっとチャラい見た目の少年。彼とは物心つく前からの付き合いで、俗に言う幼馴染だ。
「今年も同じクラスなんてね。運がいいのか悪いのか……」
彼の後ろにいるのは、同じく幼馴染の馬場亜加里。頼人と同じ苗字であることから分かるように、彼らは双子の姉弟である。
頼人とは違って染色していない真っ黒な地毛をボブショートにした、小柄な女の子。女子の平均身長よりやや低いくらいの小さな彼女が、先程の台詞を口にしながら肩を竦めている。可愛い。
「なんだよ、姉貴は枝垂と同じクラスが嫌なのか?」
「枝垂じゃなくて、あんたと同じクラスが嫌なの」
「ひでーな、血を分けた姉弟だろ」
辛辣な亜加里に、頼人が突っ込む。この姉弟はいつもこんな感じだが、別に不仲という訳でもない。何だかんだ一緒にいるし、むしろ仲良しな部類かもしれない。
「あ、あの……」
「ん?」
すると、会話に割り込んでくる声が。
隣の席のソニアが立ち上がっている。今のは彼女の声だろう。
「えっと……ソニアさん、だっけ?」
「そ、その……はい」
頼人に尋ねられて、ソニアは縮こまってしまった。実は結構人見知りするタイプなのかもしれない。
「どうしたの?」
「その……シダレ、その人たちは?」
縋りつくような目で、少し怯えた様子で、馬場姉弟について問い掛けるソニア。
「枝垂。あんた、もう留学生と仲良くなったの?」
そんなソニアを見て、ジト目で尋ねてくるのは亜加里。何か変な勘違いをされているような気がする。
「えっと……こっちは馬場亜加里と馬場頼人。二人は僕の幼馴染だよ」
とりあえず亜加里のことは一旦放置して、ソニアへの説明を優先する。馬場姉弟はソニアのことを知っているけど、逆は何も知らないので当然だった。
「どもー、頼人でーす! よろしくな、ソニアさん」
「よ、よろしく、ヨリト……」
紹介されて、頼人が明るいノリでそう言う。
そんな彼に、ソニアはおずおずと右手を差し出す。握手だろうか。
「おう」
差し出されたソニアの手を、頼人が笑顔で握った。ソニアもぎこちない笑顔で返している。
「ニヤニヤすんな!」
「痛っ……! 何すんだよ!?」
そんな頼人の頭を亜加里が引っ叩いた。頼人が女子の手を握ってデレデレしているように見えたのだろう。
「私は亜加里。よろしくね、ソニアさん。この馬鹿がなんかしてきたら私がとっちめるから、遠慮なく言って頂戴」
「あ、あはは……よろしく、アカリ」
頼人を押し退けて、ソニアに手を差し出す亜加里。そんな彼女に苦笑しながら握手に応じるソニア。
「それで? 枝垂とはどういう関係なの?」
「え、えっと……」
にっこりと、満面の笑みを浮かべながら問い掛ける亜加里。その笑顔に気圧されたのか、ソニアが冷や汗を流している。こちらも説明しないとだな。
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