第34話


 とても良い夢を見ていた気がする。

 新君に告白されて、そのままベッドに入って。


 そして夢のようなひと時を過ごしてから。

 一つに溶け合って……。


「柊さん、おはよう」

「……あれ? お、おはよう」


 目が覚めた時、私はなぜか新君のベッドにいた。


 そして寝起きの私を新君が優しく見ていたのだけど。


 なんだろう、いつもより雰囲気が大人っぽい。


 かっこいい……。


「昨日あのまま寝ちゃったからさ。よほど疲れてたんだね」

「そ、そうなんだ。あ、あれ、最後何してたっけ」

「え、いや、まあ。ゲーム終わってそのまま寝てたから」

「……そっか」


 何かとても大事な場面だった気がするけど、寝ぼけた頭ではそれは思い出せず。


 私は一度部屋に戻ってから、着替えている時に眠る前のシーンを思い出した。


「あ、罰ゲーム……」


 新君に言って欲しかった言葉。


 好き、とか。

 可愛い、とか。

 私とずっといたい、とか。


 でも、新君は何か答えてくれたのだろうか。


 それとも、何か言う前に寝ちゃったのかな。


 ……せっかくチャンスだったのに。

 私って、いつも肝心な時にダメなんだよなあ。


 こんなんで、ちゃんと新君のお嫁さんになれるのかなあ……。



「柊さん、今日はお店休みだからどっかいかない?」


 登校中、新君に急に誘われて私は驚いた。


「い、いいけど、ええと、おやすみの日は家族でご飯食べるんじゃ」

「そうなんだけどさ。今日父さんが友達と飲み会入ったらしくて。だからついでに母さんも一人で温泉行ってくるって。気ままだよなあの二人」

「そ、そうなんだ。じゃあ、どこいく?」

「この前さ、柊さんが熱出した時のお小遣いが残ってるから。それで美味しいものでも食べようよ」

「うん。何にしよっか」

「ちょっと贅沢に焼肉とか」

「わー、いいね。うん、じゃあそうする」


 焼肉って、結構親しい人とじゃないと行けないイメージだから素直に嬉しい。


 でも、やっぱりなんか変。

 新君、すごくキラキラしてる。


 積極的だし、迷いがないというか。


 な、なんで?

 もちろんそれはそれでかっこいいからいいんだけど。


 ……まさか。

 私が話の途中で寝ちゃったせいで、飽きられたとか?


 私のこととかどうでもよくなったから、サバサバしてるんじゃ……や、やだ。


 ど、どうしよう。

 このままだと私、捨てられる。


 焼肉食べたあと、そのまま置いて帰られちゃう。


 ……挽回しないと。


 今日は絶対、途中で寝たりしないようにして。


 ちゃんと昨日の話の続き、してもらうんだ。

 



 

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