第19話

「わあ、すごいな」


 柊と共に、母に勧められた喫茶店へやってきた。

 

 まだ早朝だというのに二十ほどある席はほとんど埋まっていた。


 そんな中、窓側のテーブル席だけが空いていて、そこに案内されると柊が。


「わあ、いい眺め」


 見ると、窓から見える店の庭がとても綺麗だった。


 おしゃれに施された花壇に咲く花がとても鮮やかで。


 それを見ているだけでどこか別の空間にやってきたような気にさせられる。


「いい席だね、ここ」


 柊は嬉しそうにそう言って、窓の外を眺めていた。


「うん、綺麗だね」

「いい思い出になりそう」

「え?」

「あ、ううん、なんでもない。早く注文しちゃお」


 モーニングを二つ頼むと、混んでいるのにあっという間にトーストとスープ、それに飲み物が出てきた。


 その早さに感心していると、向かいでクスクスと柊が笑う。


「ふふっ、ほんとに仕事熱心だね」

「ま、まあなんだかんだ言っても家業だからね。毎日働いてるし」

「私も、毎日働いてたら家業になるかな?」

「え?」

「……ううん、なんでもない。いただきます」


 時々、柊は俺に聞こえない独り言を呟く。

 それがなんなのか、さっぱり聞こえてないのだけどなんとなく、とんでもないことを言われてるような気がするけど流石にそれは気のせいかと。


 二人静かにトーストを食べた。



「ちょっとお手洗い行ってくるね」


 食べ終えてから席を外してトイレへ。


 洗面台に立つと、胸に手を当ててから深呼吸した。


「すう……はあ……ダメダメ、変なことばっかり口に出ちゃう」


 楽しすぎて。

 幸せすぎて。


 ずっとこうだったらいいのにって、想いが溢れてしまう。


 初めてのモーニング。


 そしてこの後は初めてのランチデート。


 全部はじめて。


 新君と、全部初めてを経験するの。


 夜は……ううん、まだそんなの早いか。


 でも、そのうち。


 就職したいなんて言ったけど、訂正しなくちゃだね。


「私も早く、あのお店を家業にさせてもらわなくちゃ」


 

 

 


 

 

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