第27話 記憶


 その日、エマは帰ってこなかった。


 何かあったのかと思ったが、事故に遭ったらしい。

 半身不随と記憶障害があって、俺の顔を見ても『誰』としか言わない。

 エリクサーを作って飲ませた。

 半身不随は治ったが記憶障害までは治らなかった。


「気長に待つしかないか」

 俺は俺の家でエマと暮らすことにした。

 最初は嫌がった、

「私の故郷はアメリカよ?なぜ日本で暮らさないといけないの!」

「そうだね、ごめんね」

 自分の部屋を見て少し落ち着いた様でここで暮らしてた事を思い出そうとしていた。


「宗治郎!お客さんよ」

「はい、いらっしゃいませ」

 とオークションをやめて慎ましやかな生活を送っている。


「よぉ、久しぶりだな」

「『サンダーパイク』のみんなか」

 店に入ってきたのは海堂ひきいるサンダーパイクのメンバーだ。

「オークションに最近出してないから気になって来てみたよ」

「あはは、オークションしなくてもいいくらいは稼いだからな」

 

 エマはそこにいるがキョトンとしている。

「その子が宗治郎のいい子か?」

「そうだな、エマって言うんだ」

「でも反応薄いわね」

「記憶障害がな」

 そうなのか、とみんな少し引いている。

「普通と変わらないけど、俺のことも忘れたみたいだ」

「その子アメリカ人?ならアメリカに一回連れていってみたら」

「そうだな。ありがとう」

 と言いながら俺はサンダーパイクになら売ってもいいかなと、

「みんな枠は余ってるのか?」

「いや。俺はもう枠はいっぱいだ」

 黒いスキルボールを出し、

「これは『枠+1』だ、一日寝込むが枠が増えるぞ」

「な、なんだって?これが?」

 黒いスキルボールを持って、よく見ている。

「いくらだ?」

「んー、友達価格で一億」

「買った!」

「今使うなよ?倒れるからな?」

「わかったよ」

 それから話をしてサンダーパイクは帰っていった。


「エマ、アメリカに行こうか」

「え……ここがいる場所じゃなかったの?」

「大丈夫、アメリカにも居場所はあるよ」

「なら帰る」

「……そうだね」

 俺たちは翌日バスで空港に行くと羽田に行きアメリカの飛行機に乗る。


 空港に着くと、

「エマ!」

「社長」

 ソフィアが待っていた。

「私のことは覚えていたのね」

「はい、社長は社長ですから」

「ハハ、ではエマのことよろしくお願いします」

 と頭を下げると、

「それでいいの?」

「俺じゃ記憶を戻すことはできないから」

「そう」

 辛い別れじゃない、楽しい別れにしないとな!


「エマ!それじゃあバイバイ」

「宗治郎!ありがとう」

 後ろを向いて涙が出るがそれでもやっぱりアメリカにいた方がいいだろ。


「エマあなた泣いてるの?」

「え、涙が止まらない……」

「そう、まだわからないのね」

「わからない、なぜ?」

「ゆっくりしましょう。私の仕事も手伝ってね」

「はい!」


 これでいいんだ。

 これで……


 日本に戻ると海堂から連絡が来て枠が一つ増えたらしい、それは良かったと言うと、何かないかと聞かれる。

「『剣帝』『槍帝』なんかがありますが」

「よし!『槍帝』だな!」

「んじゃ久しぶりに東京に行きますよ」

「おう、嬢ちゃんも一緒か?」

「あはは、エマはアメリカにいます」

「そうか、まぁ、いい女はたくさんいるからな」

「あはは、今はいいですね」

「んじゃ待ってるぞ」

「はい、」

 と飛行機に乗り羽田に到着、タクシーで東京に着くとすぐにサンダーパイクのメンバーと会う。

「お久しぶりです」

「そんなたってないだろ?」

「あはは、ただの挨拶ですよ」

「そっか。で?」

「これが『槍帝』ですね」

「おぉ、青玉だな」

「なかは」

「分かってるよ!信じてる」

 と開ける海堂。

「よし、ちゃんと『槍帝』だな!」

「当たり前だろ?」

「そうだな。それよりお前は少し休めよ」

「なんで?」

「自分の顔見てみろ」

 髪はボサボサ髭も伸びてあはは、


 それだけエマが俺の中にいたんだな。


 よし、大丈夫、


 いま、これから、ちゃんとしよう。


「あはは、大丈夫、いまからちゃんとするからさ」

「泣いていいんだぞ」

「あはは、泣けないさ、あの子は帰ったんだから」


「大丈夫、しっかりやるさ」

「そうか」

 と言ってサンダーパイクと別れる。


 床屋に行ってスッキリしてもらう。


 髭も剃ってもらい髪も整えてもらう。

「ただいま!」

「お、おかえりー!」

「なんだなんだ?帰ってきたのか?」

「おう、ちょっとスキルボールのことでね」

「あの子達は?」

「2人とも帰ったよ」

「そう、まぁ、そう言う時もあるわよ」


「よし!飲もうか」

「あなたはそればっかりね」

「あはは、飲もうかな」

「よし来た!」

 と家に入るとダイニングに座り父さんと2人で飲む。

「この前一緒に食事したあの子はどうだ?」

「いや、今はいいかな?」

「そうか、いい子だと思ったけどな」

「あはは、俺の趣味じゃないかな?」

 とそれから他愛のない会話をし、風呂に入って布団に潜る。

 目を瞑るとエマがいるが、それはもう過去のことだ。

 

 そう、過去のことなんだ。


 こっちに1週間ほど滞在する予定で、母さんに入ってあるので翌日は近くのダンジョンに入ってみる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る