第28話 制裁の銃声
「や、山田…何でお前がここに!?」
馬場は山田が持つ猟銃に焦りを見せるが、山田は不気味な笑顔を浮かべながら応える。
「何って?嫌だなぁ…馬場さん…。自分、仕事に来たんですよ…。今日の日の為に、何人も殺しちゃいましたよ…。」
山田は笑顔のまま銃口を馬場に向ける。
「な、何だよそれは!?そんなもん、どっから見つけて来たんだよ!」
「そんなの別にどこだって良いでしょう?知ったとこで…馬場さんはもう居なくなるんですから…。」
「じょ、冗談は止めろ!警察呼ぶぞ!」
バンッ!
山田の猟銃が火を噴いて、馬場の右足を撃ち抜く。
「あがあっ!!」
馬場は、その場に崩れて右足を押さえる。
「冗談?何の事っすか?俺はいつも本気だったでしょ?いつも本気なのに…馬場さんは俺を捨てた…。」
山田の笑顔が真顔になる。
「い、ま、待ってくれ…山ちゃん!クビにしたのは謝る!会社を回すには仕方なかったんだ!」
「それで新倉さんまで…辞めさせた?」
「に、新倉さんは…自分からうちとの取引を辞めると言ったんだ…。」
右足から血が流れるのを押さえる馬場。
「でも、俺、聞いちゃったんですけど…馬場さん…多額の借金の負債が増えたんでしょ?」
「そ、そりゃ、仕方なかったんだ!接待ゴルフで負けはしたが、この付き合いが無いと…仕事が回って来ないから…。」
バンッ!
今度は馬場の左肩が撃ち抜かれるが、エンジン式発電機の音で山田の銃声は搔き消されていた。
「ぐぁぁぁっ!や、やめてくれ…山ちゃん!」
馬場はのたうち回りながらうめき声を上げた。
「やめて欲しいんですか?俺がクビを考え直せと言ったら、馬場さんは取り止めてくれましたか?」
「そ、それは…。ゆ、許してくれ!謝るから山ちゃん!」
「謝って済むなら何とやらでしたっけね?」
山田は再び引き金に手を掛ける。
「大変言いにくいのですが、もうあなたには死んでもらわなきゃあね…」
「や、やめろ!くっ、お前まさか!?うちの金庫から金を出したのはお前か!」
両足から血を流しながら立ち上がろうとする馬場にいきなり飛び掛かった山田は、その首筋に噛み付く。
「ぐ、ぐはっ!」
「きえぇぇぇっ!」
山田は馬場の首の肉を引きちぎり、奇声をあげた。
「グヒヒ…俺が欲しいのは金じゃあねぇ!馬場さんの血と肉から成るタンパク質だぁぁ!」
「うぁぁぁ…ま、待てぇ!か、金ならやるぞ!何なら一緒に増やさないか?競艇で夢を叶えるんだ…。ゴフッ…。」
食いちぎられた馬場の首筋から血が噴き出す。
「馬鹿は……い、いや、くっくっくっ、馬場は死んでも治らないか…。名言ですね?」
山田は猟銃で馬場を殴り飛ばすと、倒れ込む馬場の体に容赦ない銃弾を撃ち込んだ。
馬場の身体を三発目の弾丸が貫通した後、山田はさらに数発の弾丸を撃ち込んだ。猟銃の轟音が、一階のエンジン式発電機の音に完全に掻き消される中、血塗れの馬場は物言わぬ姿でそこに倒れていた。
山田隼人は我に返り、手にした猟銃を慌てて手放し、その場から立ち去った。
一度はそのまま帰ろうと思ったものの、夫峯岸の帰りを待つことにした由紀。
慌てて逃げ帰る山田は、事務所近くの公園で由紀と遭遇してしまった。
「あれ?山ちゃん!?」
「ゆ、由紀さん…。」
「久しぶりじゃん!そんな格好で何してんの?」
「こ、これは…その…新しいバイト…。」
「そっか、無事に頑張ってるんだな…。でも山ちゃんはクビになって正解だったかも…。最近の馬場ちゃんはお金の事ばかり考えるようになっちゃって…。そしたら金庫が誰かに開けられちゃってね…。」
由紀はここぞとばかりに馬場の愚痴を漏らすが、山田の頭にはここを立ち去らなければという意志が先行する。
「ゆ、由紀さん!お、俺、バイトあるから…」
「あ!ご、ごめんよぉ。またどっかで会おうよ、山ちゃん!」
「は、はい…。じゃあ、また…。お、お疲れ様でした…。」
山田は由紀と別れて走り去るが、もう一つの恐ろしい意志が足を止めさせた。
「ま、まずいぞ…。由紀さんに見られる…。し、始末しなければ…。」
山田は暗い表情で踵を返し、由紀の後を追い掛ける。
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