会社を出たら崖崩れ

鷹山トシキ

第1話 ​崖崩れの襲来

 アルラ食品再建への第一歩として、彼らは消費者へ向けた声明を発表するため、都内のホールへ向かうことになった。津田が運転する車に乗り込み、タカシは窓の外をぼんやりと眺めていた。安堵感と疲労が入り混じり、眠気に襲われ始めたその時、携帯電話の緊急地震速報が鳴り響いた。アラタが慌ててスマホを確認すると、画面には「震度6強」の文字が表示されている。

​「津田さん、いったん車を停めてください!」

​ アラタの指示で車が路肩に寄せられた。ユウは車内に設置されたモニターで被害状況を調べ始める。しかし、その時、背後から轟音が聞こえた。彼らが視線を向けると、巨大な土砂が勢いよく道路を覆い尽くそうとしていた。工場があった場所から続く山道での、大規模な土砂崩れだった。

​「津田さん、バック!」

​ 津田は冷静にギアを入れ、急発進させる。しかし、時すでに遅く、土砂は車を飲み込んでいった。車内は悲鳴と砂埃に包まれ、視界は真っ白になった。

 救出と決意

​ どのくらい時間が経っただろうか。薄れゆく意識の中、タカシは誰かが自分の名を呼ぶ声を聞いた。目を開けると、土砂に半分ほど埋もれた車の中に、アサミがいた。

​「タカシ、しっかりして!みんなは無事だから」

​ アサミは自身も怪我を負いながら、タカシに声をかけていた。アラタと津田、ユウも無事だったが、車は完全に立ち往生し、外部との連絡も取れなくなっていた。彼らは車を脱出し、崩れ落ちた崖の上に、一台の重機が放置されているのを発見した。

​「これは…イングラムが使っていた重機だ」

​ ユウがその重機を調べると、遠隔操作で崖を崩すようにプログラムされていたことが判明した。ダイナマイトによる爆破と、崖崩れ。イングラムは、彼らを確実に葬るために、二重の罠を仕掛けていたのだ。

​「奴らは、我々を徹底的に潰すつもりだったんだ…」

​ アラタは悔しさをにじませながら、重機に手を置いた。しかし、その目に絶望はなかった。

「この重機を使って、道を切り開こう。僕たちの手で、未来を築くんだ」

​ 彼らは、イングラムが仕掛けた罠を逆手に取り、生き延びる道を選んだ。彼らの戦いは、アルラ食品の再建だけでなく、自らの命をかけた、文字通りのサバイバルへと変わったのだ。

​ 彼らは、それぞれの得意なことを活かし、重機を動かし始めた。ユウがプログラムを書き換え、津田が重機を操作する。アラタは指揮をとり、タカシとアサミが周囲の安全を確保する。泥と汗にまみれながらも、彼らは互いを信じ、協力し合った。

​ 崖崩れという絶望的な状況は、彼らの絆をさらに強固なものにした。イングラムの悪意が、かえって彼らの再起への決意を燃え上がらせたのだ。

​ 果たして、彼らはこの絶望的な状況から抜け出し、再び光の道を進むことができるだろうか?

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