再起を果たすためデストピアな異世界に転移させられた俺は若返ったので妄想しながら好き勝手に生きるぞ!!
みけ猫 ミイミ
序章
第1話 プロローグ★再起への勧誘
「いい加減にしろ! お前たちの好き勝手に利用されるつもりなんかない!!」
そう言い放ち黒で短髪の男性は追手を振りきりながら武器を妄想し攻撃する。
この男性は鬼崎英治(きざき えいじ)、十八歳だ。転移者であり、この世界モルネデアスでの名前はエイジ・オウガと名乗っている。
なんで英治が追われているのかって?
その理由を語るには一か月前に遡って話した方が早いかな。
――そして約一か月前に遡る……――
ここは、とある町の公園のベンチだ。
ベンチには如何にも疲れきった男性が座っている。ボサボサで白髪混じりのショートヘアだが真新しいスーツを着ている。
この男性は鬼崎英治で五十五歳だ。そう転移する前の彼なのである。
「ハァー……再就職は難しそうだ。今日、面接した所も反応がいまいちだったしな」
そう面接の帰りなのだ。
今日で五社面接して四社も断られている。今日面接した一社が駄目だったらと考え頭を掻きむしった。
この様子を見た限り髪がボサボサなのは何度も頭を掻きむしったせいのようだ。
(なんで、この歳になって会社を辞めなきゃならないんだ? そもそも、あの件は俺のせいじゃないぞ)
そう英治が悪い訳じゃない。だが自業自得ではある。部下の失態を庇い会社を辞めるハメになったのだ。
(昔から……俺は、ついてない。何をやっても上手くいかなかった)
昔のことを思い返し英治は深い溜息をついた。
「何を、そんなに思いつめているの?」
その声を聞き俯いていた英治は自分にじゃないと思うも正面をみる。
すると、そこにはピンクのキグルミの少女が無表情で立っていた。
キグルミの下の姿は紺色の前髪が微かにみえ可愛い容姿である。
「俺に話しかけてるのか?」
「勿論よ。それに今は、この範囲だけ結界を張っているわ」
「結界? 何を訳の分からないことを言ってる? 今流行りの子供の遊びか?」
子供に揶揄われているんだと英治は思った。
こんな少女にまで馬鹿にされるのかと呆れて苦笑する。
「遊びじゃない。ボクが言っていることを理解する必要はないわ。それよりも何をそんなに悔やんでいるの?」
「そうみえるのか? 君みたいな少女に話しても分かってもらえないだろうが……話せば少しは楽になるかもな」
そう言い英治は大学を卒業してから長年勤めた会社を辞めた理由と面接をしても落ちまくっていることを話した。
それだけじゃなく、なぜか今まで好きなこともせずに我慢してきたこと。
彼女も作らずに仕事だけだった人生などなども打ち明ける。
「それって一種の才能だよ」
「才能だって? そんなの俺にある訳ない! あるのは、どうでもいい妄想だけだ」
「じゃあ、その妄想で創作すればイイと思うよ」
それを聞き英治は、なんで子供にこんなことを言われなきゃいけないんだと腹が立ってきた。
「ふざけるな! 簡単に言ってくれるが……無理に決まってんだろ」
「そんなの、やってみなきゃ分からないよ」
「まあ……そうかもしれない。でも、そんな勇気と行動力があれば……今頃は違う人生を歩んでいただろうな」
段々とツラくなってきた英治は頭を抱え俯いてしまう。
「だったら今からでも間に合うと思うよ」
「何を言ってる? ハァー……もう俺は、五十五だぞ……流石に無理だ」
そんな英治の目の前に少女は名刺を差し出した。
それを英治は受け取る。
「あなたの夢を叶えます。夢の国への案内人、ライネオル・ラック。フッ……本当に夢が叶うなら嬉しいけどな」
「本当に、それでイイの? 新たに人生を、やり直して夢を叶えたいって思っているんじゃないのですか? だから貴方はボクのことがみえているのです」
「どういう事だ? それが本当なら嘘でもいい! 叶うなら……この世界とは別の場所で十代に戻って自分の思うがままに創造して暮らしたい!!」
それを聞き少女は、ニヤリと笑みを浮かべる。
「フフッ、イイ欲望ですよ……鬼崎英治! その全ての願いを叶えてあげましょう~」
すると少女は両手を英治に向け聞き慣れない詠唱のような言葉を呟いた。
(ハァ? 何を訳の分からないことを言ってるんだ。そもそも子供の遊びにしては度が過ぎてるぞ)
そう思っていると英治の真下に魔法陣が現れ発光した。それと同時に英治の姿は一瞬で消える。
「クスクス……何処まで、その欲望を叶えられるのでしょうか。まあ、ボクはタダの案内人ですので。どうなるのかは英治の行動次第ですよ」
満足した表情で少女は笑いながら姿を消した。
時間が止まっていたらしく周囲の景色や人々は何もなかったように動きだしている。
・
・
・
❈
✧
❈
・
・
・
……――砂漠の、ど真ん中で英治は目覚めた。
(ん? ここは何処だ。暑いし周囲は砂しかないぞ)
そう思いながら立ち上がる。
手には鞄を持っていた。
(良かった! この中には大事な書類とか入ってるからな)
鞄に視線を向けた直後、自分の手をみて首を傾げる。
(ハリのある手だ。確か十代の頃は、こんな感じだったはず……どうなってる?)
何が起きているのか分からず困惑していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます