第3話 1人目の仲間

 少女を背負ったまま、丸腰の俺は森を駆け抜けていた。

 村の門を抜け、細い路地をぬけ、自宅の扉を突き破るようにして家に入る。


「あら、どうしたの。その女の子」

「大変なんだ! スライムに顔に張り付かれて、それで、動かなくなって……」


 涙が溢れてくる。見ず知らずの少女の死。しかし、彼女は自分を庇ってくれた。自分のせいで人1人の命が絶えゆく様に、そこはかとない恐怖を感じた。


「あら、そんなのあそこのベットに寝かせてればすぐ目を覚ますわ」

「え?」


 呆気にとられる俺から少女を受け取ると、だらりと力なく垂れる少女を俺のベッドに寝せた。

 程なく、母さんの言ったように、何事も無かったがごとくすくっとおきあがり、辺りをキョロキョロ見渡す。

 その姿に俺は感極まり、抱きついてしまった。


「よがっだぁぁあ」

「うお! な、なんだよ気持ち悪い! はなれろ!」


 雑魚ゴブリンに殴られただけで悶絶するほど痛かったのに、窒息して死亡するなんて、想像を絶する。


「大体、死んだくらいで大袈裟なんだよ! そんな事でいちいち泣きつくな!」

「死をそんな軽く言うんじゃないよ! こっちは心配して心配して」

「そら、運んでもらったのは悪かったけどさ……」

「そんなんじゃねえ! 俺はお前に死んで欲しくないって言ってんだ! 運ぶのが重いとか、めんどくさいとかしんどいか、そういうんじゃなくて!!」


 少女は目を丸くする。


「そ、そんなこと言われたの初めて……」


 攻略本にも書いていたが、この世界では死とはさほど重要では無いらしい。死んでもすぐに復活できる。しかし、先程ゴブリンとの戦闘を終えた俺にとっては、復活できるからといって全く楽観視できる条件ではなかった。


 生き返るとしても、死ぬ時の痛みや、感情は残る。


 そんな事を身をもって経験しておいて、大丈夫だ!死んでも生きけーれる! なんて言えるはずがなかった。


「……いいわよ」

「うぐっ……なんて?」

「その……仲間になって上げても……いいわよ」


 うぅ。涙が溢れて止まらない。俺は満を持して答えた。


「いいえ」


 ゴチーん! いってぇー!!

 小柄ながらその鉄拳はゴブリンの棍棒並に重かった。


「は?! 泣きついて来るんじゃないのかよ! またしても殴りやがって!」

「あんたは問答無用で私を仲間に入れるのよ! よろしく! 私はリナ。ヒーラーよ。よーく覚えときなさい」


 こうして、俺は1人目の仲間、ヒーラーのリナをパーティに加えた。

 この状況を微笑ましそうに見守っていた母が「おふたりさんご飯よー」と、声をかけてきたので、3人で食卓を囲むのであった。


「それはそうとして、私許してないから」


 食事の手を止め、なにが?という顔をして見せる。



「あんたが1回目、私の事スルーして行ったこと!!」

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