転生特典の破滅エンドの鬱ゲー世界の【攻略本】無くしたせいで仲間になるはずの美少女キャラがなんか全員変なんだが?

@サブまる

序章

第1話 新しいあさが来た。絶望の朝だ

 ピョピョ。ピョピョ。

 奇妙な鳥の鳴き声、窓枠から差し込む朝日、ツンとしたヒノキの匂いに、俺は目を覚ました。そして、程なくして絶望する。


「あらおはよう、ロンちゃん。ずいぶんと長旅だったみたいね? 帰ってきてくれて嬉しいわぁ」

「……ここは」


 原木そのままの壁を背景に、キッチンで料理をするエプロン姿の母。

 小さい頃から見慣れたその光景に、強烈な違和感を覚えた。


「あれ? 【攻略本】は?」

「コーリャクボン?」

「あれだよ!俺が生まれた時から何故か持ってたやたらカラフルで固くてでかい絵本みたいなやつ! 知らない?」

「あらぁ、どこに行ったかしら」


 俺はすぐさま飛び起きる。ベッドの上、布団の中、天井、ベット下、くまなくさがすが、あの異質な存在感を放つデカブツはどこを見渡してもなかった。ど、どこいった!!


 這いつくばった状態から立ち上がろうとした時、ズキリと、こめかみ辺りに電流が走った。


「いってぇ…………あ!?」

「そうよ! おもいだしたわ。あなた、攻略本をもって伝説の装備取ってくる! とか言って飛び出して言ったっきり、1度も連絡よこさなかったわ。心配したのよ? 寂しい思いしてないかって。でも良かったわ。次の街に行く前に死んだみたいで。こうしてまた、復活して会えたのだもの」


 軽いノリで出てくる母の「死」とか「復活」とか、そういった言葉に強烈な違和感を感じつつも、おもいだした。今はっきりおもいだした。そうだ。さっきまでの景色と全然違う。


 あのバカでかい気色の悪い本は小さい頃から肌身離さず持ってて、そのおかげか誰も読めないあの文字が読めるよってになって、【伝説】とか書いてた装備が欲しくなって……


「最果ての迷宮ダンジョンに置いてきた……いや、死んでそのまま全部ロストしたってところか」

「ロスト? なにそれ? それに、最果ての迷宮ダンジョンなんて、この辺にそんな名前のダンジョンはありませんよォ」


 子供の戯言、と言わんばかりに微笑ましげにそう言い放った。ほんとにいったのに!


 そうだ。


 攻略本に最後のモンスターの攻略法が全部乗ってたから、こんなん余裕ジャーン。とか思ってたら、門番攻略で全く攻撃見えなくてそのままペちゃんこにされたんだ!


 道中の記憶はごっそり落ちてる。


 相手の行動とかめちゃくちゃ予習していったのに、動きがわかっててもそれに反応出来なかったら意味ねーじゃん! 体動かなかったら意味ねーじゃん! そら負けますわ。


「ご飯できたわよー」

「わぁ、オフェンシブシチューだぁ」

「なにそれ? これはね、元気茸っていう元気の出るキノコを入れたママ特製の愛情シチューよ? 全く、異国の言葉でママをあんまりからかわないでね?ロンちゃんが遠くに行った気がして、すごく寂しいんだから」

「ごめんごめん。大好きだよママ。このシチューすごく美味しい! 力が出る!」


 ふふっと涙をこぼし笑みを浮かべる母を見て、なんといい親孝行をしたのだろうかと思いつつも、ドクドク、ドクドクと、自分の心臓が早まるのを感じていた。

 受け入れられない現実を、徐々に脳みそが理解してきたらしい。


「いーーーやなにごと!!! え!? 置いてきた!? あの大事な本?!」


 俺は急いで服を着替え、どの町にも必ずひとつは存在する道具屋へ、一目散に走り去るのであった。


「はやくとりいかないとおおおおおおお!!!!」


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