ワンミニッツショート

スタシスホメオ

席替え

 次の席替えは、くじ引きで決めよう──そうクラスに提案したのは私だった。

 先生が黒板に席番号を書き、全員がくじを引く。引いた番号が次の席になる。

 公平に見えるけれど、実は裏がある。


 私と友達五人は共謀して、全部の番号の偽くじを作っていた。

 くじを引いたあと、番号を入れ替えれば、六つの席を自由に選べる。

 彼の番号さえわかれば、その隣に座れる確率はかなり高くなる。

 男子はくじを引いてすぐ大声で番号を教え合うから、彼の番号を知るのは簡単だ。


 だけど、席替え当日、予想外の事が起こる。

 私がくじを引いて席に戻る途中、彼が話しかけてきのだ。


「何番だった?」


 咄嗟に、正直に答えてしまう。


 ──終わった。


 彼に聞かれてしまった以上、番号を変えることはできない。

 友達たちは残念そうにこちらを見ていた。


 そう思ったのに、席替えの結果、彼は私の隣になった。

 偶然? 奇跡? 顔に出ないように喜びながら隣を横目で見る。

 真剣な表情でノートを取る彼の奥、数人の男子達が、にやけながら彼に親指を立てていた。

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