第3話  絶体絶命の中で

この物語は妄想全開のサバイバルフィクションです。



速い潮流に体が流され慌てて泳ごうとするがリュックサックを背負っているので体が思うように動かない。

リュックサックは次第に水を含み、荷物の重さに私の体を水中へと引きずり込む。

焦る体は潮の流れに揉みくちゃにされ自由を奪われる。

ダメだ!

そう思ったとき無意識にリュックサックから腕を抜き、水面めがけて必死に泳ぐ。

リュックサックを離したお陰で何とか向こう岸まで泳ぎ着いた。

岸に上がって命だけは助かって良かったと真底思った。

あのままリュックサックを背負ったままだったらどうなっていたのか…

それを思うとゾッとした。

荷物は全て流されてしまったが先の体験を思うと、どうでも良いことだった。


荷物も全て流された以上もはや何としてでも目的の島へ辿り着くしかなくなった。


空を見るとすっかり黄昏を超えて日没へと、進む時間になっていた。

夕陽を目指して進め!

それだけを繰り返し道を歩き出した。


この島まで辿り着けば目的の島までは陸続きになっている筈だった。

筈だったというのはもともと島として両島とも成り立っているのだが、干潮時だけは島と島の間に道が現れ渡る事が出来るためだった。

果たして道はあるのだろうか?

しかし今は道を進むしかない。

ひたすら夕陽にむかって歩いた。

歩きながら夕陽を見つめる。

西の空が金色にたなびき、光線は海原に銀色のダイヤモンドを無数に散りばめている。

陽は一時もその変化を止めず刻一刻とその姿、色を変えてゆく。

陽がオレンジ色に変わる前に島と島を結ぶ道へとたどり着いた。


島と島の距離は思ったより広く、歩いても10分ちょっとはかかるだろう。

その道を歩き出そうとしたとき太陽がオレンジ色に染まった。

たなびく雲をオレンジ色に染め徐々に徐々に沈んでいく。

その速さは肉眼で見ていても分かるほどで、地球の速さを実感する。

時折、線香花火の球のように燃えるような金色にを放ち、最後には本当に線香花火のようにたわわに熟れた赤い球を地球の端へ落としてゆく。

「本当にきれいだ」

そんな言葉しか浮かばないほど地球の美しさに圧倒されていた。


気を取り直して海の道を進む。

薄暮の薄闇の中、道だと思って進んでいた海の道が少しずつ水に浸かって行く気がする。

薄明の中目を凝らすと先程までハッキリ見えていた道が水に浸かって見えない。

干潮時が過ぎたのだ。

水は既にすねの高さを超えている。

思わず走り出すが水に足を取られ思うように動かない。

焦っているうちにすっかり陽も落ち辺りは暗闇に包まれた。

闇雲に動くことも出来ず、闇に目が慣れるまでじっと待つ。

徐々に目が慣れ島の輪郭が次第にボンヤリ見えだした。

そうこうしているうちに水の高さは私の胸辺りまで上がってきていた。

焦らないように自制をしつつ島に向かって泳いだ。

島に泳ぎ着いた時、力尽きて浜に倒れ込む。

力を振り絞り仰向けになる。

広がる銀河が見えた。


光源がないためむき出しの宇宙がそのまま見えた。

星空を横切るように白く煙ったような天の川がうねるように横たわる。


宵の明星というがここではどれがそれだかわからないほど幾千の星屑に紛れて輝いている。

こういう時、涙が溢れるというが何も込み上げない。

自分が宇宙に向けて剥き出しにされているという事実にただただ圧倒されて感情を忘れた。


ーそうだ‥歩き出さなきゃー


力を振り絞り立ち上がる。

森の小道を歩き出す。

一歩づつ、一歩づつ歩いていく。

歩きながらいつもの日常が浮かぶ。

さっきまで何も感じなかった心に色々なことが浮かぶ。

怒ったこと、嬉しかったこと、悲しかったこと‥。

胸がキューっと苦しくなり瞳に涙が滲む。

涙がとめどなく溢れて止まらなくなった。

どこに水分が残っているのかわからないほど次々溢れてくる。

泣きながらも歩を止めず歩き続けた。


暗い道が心なしか明るくなってくるのを感じる。

いつの間にか森が林になり道も広くなっている。

少しの希望に歩く歩調にも少し力が入る。

しばらく歩くと道の先にほのかな光が見えた。

あの星空からひとつ迷った星がここに落ちたのかしら‥

そう思うほど温かい光を放っている。

ぼんやりとした光に導かれ光の方へ歩く。

光はどんどん大きくなり温かく包む。

私は迷わずその光の輪に飛び込んだ。




to be continue‥

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