【1分で読める創作小説2025】おもちゃ箱。

風雅ありす

#1. 嵐の夜に

 大都会――――東京。


 その日、台風がきた。暴風雨の影響により交通網が麻痺。駅には、足止めされた乗客たちで溢れていた。


 ローターリーには、タクシーを待つ行列ができている。


 ようやく来たタクシーを、横から割り込んで乗り込む輩がいた。


 列に並んでいた数人が「降りろっ」と怒り出す。


 それでも卑怯者はタクシーから降りようとしない。


 そのままタクシーを出発させようとするものの、待ち人たちが断固として行かせまいとする。


 待ち人の傍には、私も怒っているぞと主張する便乗者がいた。


 板ばさみになった運転手は困っている。


 それを俺は、列にも並ばず、ただ傍観していた。


 押し問答の結果、卑怯者は降り、待ち人と便乗者がタクシーに乗り込んだ。


 タクシーから降りた敗北者は、ふてくされた様子で行列を観て野次をとばす。


――ああはなりたくない。


 ため息と共に吐いた息は、ニコチンの煙となって暗い嵐の空に滲んでいった。

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