魔女が営む雑貨屋さん【鏡編】
みららぐ
①
「試合、頑張ってくださいね」
「おぅ」
そんな些細な会話をした真夏のグランド。
しかしその後、有頂天でトイレの鏡に向き合うと、そこには汗びっしょりの化け物のような自分が映っていた。
「嘘でしょ…誰こいつ!?」
いや、確かに憧れの芦名先輩に声をかける直前、汗は拭いておいたし小さな鏡で自分の姿を確認した。
でも…実際はこんな悲惨なことになっていたなんて。
もう最悪。
芦名先輩、汗びっしょりの私のことを見て、どう思ったかな…。
きっと、普段持ち歩いている鏡が小さすぎるんだ。
私は明日の土曜日に、少し大きめの鏡を買いに行くことにした。
******
…とはいえ、この辺に良い雑貨屋さんなんてあっただろうか…。
近くにデパートはあるけれど、ブランドものの鏡だから高価なものばかりで、学生の私に買えるような値段じゃない。
そもそもお母さんに「新しい鏡が欲しいからお金が欲しい」と言ったら、たったの1000円しか貰えなかった。
出来ればどこか安い雑貨屋さんとか…。
そう思いながら、やがてインターネットで探し当てたお店が、その「Moon」という雑貨屋さんだった。
その建物は小学校の裏側という日の当たらない場所に建てられていて、週末の昼間でも人通りが少ない。
外壁は真っ黒く、窓やドアはまるでおとぎ話にでも出てきそうな独特の造りをしている……が、不思議な雰囲気だけど、初めて入るしちょっと楽しみかも。
私はそう思いながら、やがてドアを開けると「こんにちはー!」とお店の中に入った。
いざ中に入ってみると、中には他のお店と同じくひんやりと冷房が効いているようだった。
むしろちょっと寒いくらい。
だけどそれよりもまず私が目を奪われたのは、その雑貨屋さんの店内に広がる煌びやかな光景だ。
店内はそこまで広くは無いが、雑貨屋さんということもあり、アクセサリーや時計、帽子に傘、鞄に眼鏡…など、色んなものが売っている。
…まさかこの辺にこんなかわいいものが集まるお店があったなんて…。
私はそう思いながら、しばらくは黙ってアクセサリーに目を奪われていたが、やがて時間が経つとともにやっぱり寒さが我慢できなくなってきた。
…すっごいクーラー効いてるな、この店…。
でも…
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