第7話
図書館は静寂に包まれていた。
ページをめくる音とペンが紙を走る音が、まるで集中を助けるBGMのように響いている。
僕は完全に勉強に没頭し、ノートにメモを書き込んでいた――その時。
バンッ!
扉が勢いよく開いた。
「ハル!! 助けて! 大変なの! すごく緊急事態!」
ミイが両手を大げさに振り上げて叫んだ。
思わずペンを落としかける。
「み、ミイ?! 何してるんだよ?! ここは図書館だぞ!」
すでに険しい顔をしていた司書が、唇に指を当てた。
「……シーッ!」
「す、すみません……」僕は肩をすくめて小声で答える。
深いため息をついてノートを閉じる。
ミイがいる限り、平穏は長続きしない。
仕方なく立ち上がり、彼女の後を追って図書館を出た。
「で……今度は何だよ?」僕は眉をひそめる。
「そんなに大急ぎで呼び出すなんて。」
ミイはやけに真剣な顔をして振り返る。
まるで運命の秘密を打ち明けるかのように――彼女が指さしたのは、歩道の片隅にある即席の屋台だった。
そこでは女の子が、カラフルなカップに入ったブラジル風チョコレート菓子「ブリガデイロ」を売っていた。
「どっちを選べばいいか分からないの!」
ミイは半泣きのような声を出す。
「イチゴ入りのブリガデイロ……? それとも、ピーナッツパウダーのブリガデイロ……?」
僕は数秒間沈黙した。状況を理解するのに時間がかかる。
「……お前、それで僕を図書館から連れ出したのか?」
「でも本当に悩んでるの! 決められないの!」
彼女は僕ににじり寄り、手を合わせて懇願するように言った。
「お願い、ハル……助けてよ。」
ぷくっと頬をふくらませ、うるうるとした瞳で見上げてくる。
……顔が一気に熱くなる。
「ああもう……お前ってやつは……」
「で? どっち?」
さらに身を乗り出してくる。
僕は観念して首を振った。
「分かったよ……ピーナッツのにしろ。そっちの方が絶対合う。」
ミイが何か言う前に、僕は屋台の子にお金を渡した。
カップを受け取った瞬間、ミイの目がキラキラ輝き、飛び跳ねそうな勢いで叫んだ。
「やったぁぁ! ハル、最高!」
ブリガデイロを宝物のように抱え込むミイ。
僕は疲れたようにため息をつくが、胸の鼓動が速くなっているのを隠せなかった。
その笑顔を見ていると……。
ふいに、ミイが僕を見つめて爆弾のような一言を放った。
「ねぇ、こんなに優しくされたら……私、ハルと結婚しちゃうかも!」
「ぶっ……け、結婚……?! な、何言ってんだよいきなり!」
声が裏返り、顔が真っ赤に燃える。
ミイはただ笑って、ピーナッツのブリガデイロを満足げにかじった。
……どうしていつも僕をこんな風に振り回すんだよ。
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