第5話
ミはしっかりと僕の手を握り、森の小道を引っ張っていく。
道は狭く、両側に木々や岩が並び、歩を進めるごとに川の音が遠ざかっていった。
「ここ…景色がすごくきれいだな。」
僕が木漏れ日を見上げながらつぶやくと、ミは笑顔で答える。
「そうでしょ? でも気をつけて、ハル。道は急だから、油断すると危ないよ。」
しばらく進むと、大きな岩が道を塞いでいて、その向こう側との間に隙間が空いていた。
「はい、ここはジャンプね。」ミが当たり前のように指差す。
「ジ、ジャンプ?! 無理だ、絶対届かない!」
「できるって。私を見て、飛んで。ちゃんと受け止めてあげるから。」
立ち尽くす僕。だけど彼女の笑顔を見た瞬間、足が勝手に動いていた。
思い切って飛び、なんとか岩を越えると、彼女のすぐそばに着地した。
「ほらね? よくできました、ハル!」
心臓が跳ね上がる。ジャンプのせいか…それとも、彼女がこんなに近くにいるせいか。
数分後、まるで別世界のような場所に辿り着いた。
地面は白い砂に覆われ、小さな隠れたビーチのよう。背の高い木々が心地よい影を作り、目の前には澄んだ水が静かに流れている。
「着いたよ。」ミが両腕を広げ、誇らしげに言った。
僕は辺りを見回し、感嘆の声を漏らす。
「…すごいな。こんな場所、どうやって見つけたんだ?」
ミは少し懐かしそうに微笑む。
「ここはね、父のお気に入りの場所だったの。よく一緒に来てたんだ。」
一瞬、空気が変わる。ここが彼女にとって特別な意味を持つ場所だと分かる。
言葉を探していると、ミが突然シャツとショートパンツを脱ぎ捨て、鮮やかな青のビキニ姿になる。
顔が一気に熱くなる。
「な、なにしてるんだよ!?」
「え? 泳ぐんだから、当たり前でしょ?」
腰に手を当て、まるで当然のことのように言う。
「で? どう、似合ってる?」
僕は顔を背け、まともに見られない。
「お、俺は…すごく…きれいだと思う。その青いビキニ…君にすごく似合ってる。」
ミは満足げに笑う。
「でしょ? かわいいでしょ?」
そう言うと、彼女は駆け出して水に飛び込み、すぐに顔を出して叫んだ。
「冷たーい!」
そして僕を振り返り、楽しそうに笑う。
「ほら、早くおいでよ、ハル!」
「お、俺は…」ためらいながらも服を整え、水に入っていく。
冷たさが肌を刺すが、すぐに心地よさに変わった。
「うわ…すごいな、これ。」
ミは笑いながら水を僕にかける。
「言ったでしょ? ここは特別なんだ。」
僕も笑い返し、彼女を見つめる。
そして気づいた。――特別なのは、この場所だけじゃない。
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