第2話


— 合格者はおめでとう。次の授業で会おう。


先生が答案用紙を返し、教室を後にした。

手にした用紙を見下ろす。満点。


— ハル! — ミが嬉しそうに駆け寄ってくる。 — 何点だったの?


— 満点だったよ — 得意げに聞こえないように答える。


ミは固まった。目を大きく見開いて。

— ま、満点…?


気まずく笑って尋ねる。

— で、ミは?何点?


— あ…それは…秘密にしとく。


答案を隠そうとするミ。つい、覗き込もうとすると、彼女は素早く紙を胸に抱きしめた。


— えー、気になるだろ!教えてよ。

— あっ、もう次の授業に遅れる!じゃあね!


僕が引き止める前に、ミは廊下に消えていった。


その日一日、彼女は…僕を避けていた。

昼休みにも目を合わせず、授業でも近づいてこない。

「もしかして、何か余計なこと言ったかな…?」


最後の授業中も、どうやって彼女の点数を知るか、そればかり考えていた。

チャイムが鳴り、荷物をまとめて校舎を出る。


キャンパスの道で、うつむいて歩くミの姿を見つける。

— ミ! — 手を振りながら呼ぶ。


彼女は僕を見て…走り出した。

— ちょっと、待って!


慌てて走ったせいで、ミは足を滑らせる。

倒れる前に、僕は咄嗟に腰を抱きとめた。


— 危ない!

— あっ…


腕の中で動けなくなるミ。顔は真っ赤に染まり、時間が止まったようだった。

だが次の瞬間、彼女の視線が地面に向かう。


— わ、私の答案!


風に飛ばされた用紙が芝生に落ちそうになる。

ミは僕の腕を振りほどき、驚くほどの素早さで飛び込み、両手で紙を掴んだ。


— ふぅ…危なかった。


— すご… — 思わず呟く。


近づいて問いかける。

— どうして僕に点数を言いたくないんだ?


ミは胸に答案を押し付け、ためらいながら答える。

— だって…恥ずかしいんだもん。点数、悪かったから。

— それがどうした?

— だって…授業についていけなかったら…ハルは「バカな子と一緒にいたくない」って思うでしょ…


涙が滲む瞳。


— ミ…君はバカなんかじゃない。 — 強く言う。 — 他の科目は得意だし、苦手なのがひとつくらいあっても平気だよ。


驚いたように僕を見て、涙の中に小さな笑顔が浮かぶ。

— ハル…


その時、強い風が校庭を吹き抜けた。

— きゃああ!


ミのスカートがめくれ上がる。

慌てて手で押さえるが、答案が再び風に飛ばされてしまう。


— み、見た!? — 顔を真っ赤にして叫ぶミ。

— み、見てない! — すぐに目を逸らす。

— よ、よかったぁ…


二人並んで大学の門を出る。数秒の沈黙の後、どうしても我慢できずに口を開いた。


— 黒って、いい色だよな。


— は、ハルーーー!!! — 顔を覆い、耳まで真っ赤になるミ。 — やっぱり見たんでしょ!


お互い大笑いしながら歩いた。

その頃には答案用紙のことなんて、すっかり校庭に置き去りになっていた。


そして僕らは笑顔のまま、家路についた。

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