第肆話 「夢見た私」


 私の夢は破れた。

 私の夢は、穏やかな日常を送り、満足のいく、納得した形で生涯を閉じることだった。出来ることなら、他人ひとの役に立ち、感謝して貰えたら、それだけで幸せだった。


 しかし、その夢は無残にもあるものによって打ち砕かれたのだ。

 別に、ここで恨み辛みをあげつらうつもりはない。だがしかし、夢が破れたという現実は、私にとって非常に大きな出来事だった。


 私に両親の記憶は無い。言うなれば孤児というものだ。

 しかし、寂しい思いをしたことは一度も無い。なぜなら、私を貰ってくれた家族は、まるで私を自分の子供のように、大切に私を扱ってくれたからだ。

 家族に新たな命が生まれた時も、私は長女として、しっかりとその新しい妹の面倒を見た。

 彼女も私をおねぇちゃんと慕ってくれ、私にべったりとくっつき、寝る時も一緒だった。

 とても、幸せな時間が流れていたのだ。


 ある日、私が大怪我をしたことがあった。

 命に関わる程ではなかったが、大きな傷からは肉がはみ出し、家族の手には負えない傷だった。しかし、彼らは私を見捨てることなく入院させてくれた。

 私は一命を取り留め、無事退院することが出来た。大きな傷は残ったが、家族はそんな私を受け入れ、これまで以上に愛情を注ぎ込んでくれた。


 私は本当に嬉しかった。

 そして、その時誓ったのだ。この家族のために生涯を費やそうと。私の命が尽きるまで、この家族のために生きるのだと。


 彼らが私の気持ちをどこまで理解し、受け入れてくれていたかは分からない。

 たとえそれが一方通行の気持ちであっても、それはそれで構わなかった。


 私はずっとそう考えていた。その時までは。

 しかし、私の夢が破れたその瞬間は、突然訪れた。何の前触れもなく、私の前に現れたそいつは、私の妹を夢中にさせた。おねぇちゃんと慕ってくれた妹の姿は、もうそこにはなかった。


 私は部屋の片隅に放り出され、そのテレビゲームに夢中になる妹の姿を眺めるしかなかった。古びた人形として。

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