男が一人でするのはツラい

それにしても頭撫でているだけでは間がもたない。やっぱり何か話さないとだよな?

一流メンケアラーへの道は厳しいものだ。


「怜奈さん、明日新しいシュシュをプレゼントするよ。それとも一緒に買いに行こうか?怜奈さんの好きなの選んだ方が…いやダメか」

「ダメなの?」


その上目遣いは破壊力が強可愛いな。


「俺の特別警護官なんだけどさ、外に出る時ずっと腕を組んでくるから、二人でゆっくり買い物は出来ないかなって」

「男性保護特別警護官…」


警護官の話題に食い付いてくれたので話が弾んだ。


俺には『特別』警護官がいる。普通の警護官とは違い同じ家に住み、身の回りの事を全部してくれる。

着替えから食事から月一回のアレまで。


お風呂の時は脱衣場でなぜか待機している。すりガラスの向こうに人影が見えるのは落ち着かないが警備の為だと言われればしょうがないか。


朝起きればベッドの横に立っているし、学園への送り迎えでは運転しながら手を繋いでいるし、買い物では腕を組んでくる。本当に警備の為なんだよな?と深読みしてしまう。

重い物を持ってくれるのは助かるけど。

だいぶ距離が近いんだよね。


これも男性が女性に慣れるために法律で決められた制度だ。

男性が結婚すると『特別』が外れて専属の警護官になる。色々な事は妻がしてくれるから。


あとは、まあ特別警護官と結婚してしまう男性が多い。なあなあと言うヤツだ。

一番結婚に近い職業とも言われている。



「手伝ってくれるのは助かってる。男が一人でスルのは辛かったりするから…分かるでしょ?」


洗濯や掃除、家事全般、食事なんて男一人ではなかなか大変なんだよ。


次は私が手伝うよ!シた事無いけど頑張るから!お願い」


そんな熱っぽい目で顔を赤くしてお願いされたら「うん」としか言えない。

で?俺は何をお願いされたんだろうか?



「ねぇ陽太君?連絡先ライーン交換してくれないかな?」


え?


キーンコーンカーンコーン♪


「それでは授業はここまで、陽太様、気分悪くはないですか?そうですか、それでは気を付けてお帰りくださいね」


「はい、さようなら~」


で、連絡先だ!

ここで怜奈さんの連絡先を貰うのは簡単だ。

彼女から言ってくれてるし。


だがクラスメイト全員と交換するとなると難しい。

後で俺から言う勇気も出無いだろう。


でも今なら言えそうな気がする!

怜奈さんの作ったこのビッグウェーブに乗れ!

全員と交換するんだ!

俺は怜奈さんを置いて教壇に立ち言ったんだ!


「あのさ、交換しないか?」


「「「え?何を?」」」


「そ、その、あの、あれだ!俺明日はお弁当食べてから帰るから、オカズ交換しないかな?なんて」


やっぱり慣れない。

『ライーンを』その一言が出て来ない。

そんな事はないとは思ってはいても断られたらどうしよう、が先に浮かんでしまう。


とっさに出たのがオカズ交換…

なんだよオカズ交換って。


女子のお昼かよ!


「「「「する!」」」」


するのかよ!


「でもあれだよ、最近ニュースになってたでしょ?男性を監禁して髪の毛やら体液やらが入った料理を食べさせたやつ。ああいうのは気持ち悪いからダメ。分かってるよね?」


「「「「ワカッテルヨー」」」」


「別の子に毒味させるからね。あとそんな事する子とは交換しないからね。オカズじゃなくて俺のライーン」


「「「キャー、絶対しないよ!ちゃんと作ったらライーン交換してくれるの?」」」


「いいよ。入れるのは愛情だけね♡」


「「「キャー」」」


なんか言えてしまった。良からぬ事を考えてそうな子をからかいたくなったら言えた。


連絡先、ゲットだぜ!(予定)


ならアレも言っちゃおう。


「あとさ、このクラスだけ男性保護法なんて無視しちゃおう!」


「「「え゛!?」」」


「男性に話し掛けてはいけないだの、男性に敬語を使いましょうだの、あの辺の法律なんて俺にはいらないの。こう見えて俺は自分から話し掛けるの苦手なんだ。だから皆から話し掛けて欲しい。仲良くなりたい。そういう事だから明日から宜しく。じゃあね」


言う事言ったら恥ずかしくなってきた、少し早口になってた気がする。大丈夫だったか?

逃げるように帰るとしよう。



◇◇◇◇


「ちょっと待って!今日情報多すぎて頭おかしくなるって」


「キスマークから始まり、怜奈のメンケアという名のイチャイチャでしょ。怜奈なんて搾精のお手伝いに立候補するし、それに男性保護法無視!?」


「あとオカズー!絶対変なの入れるなよ。アンタの何かなんて口に入れ…ウェッ気持ち悪くなってきた」


「入れないって!男のライーンなんていくら積んでも手に入らないって言うしこんなチャンス逃す訳ないでしょ」


「「「だよね~」」」


「イケメンだし優しいしエッチだし最高の男でしょ。それに押しに弱いのかな?なんか頼めばヤらせてくれそうだよね?」


「「「わかる~」」」


「でも嫌われたくないからなぁ。今はあのイチャイチャで我慢するよ。次は私が隣に座るんだ~!」


「「「私が座る~!」」」

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