ももとさくら

おみくじさん

序章そのいち「少女の責任と想いと覚悟」

 ソリを引き摺り歩く。ガリガリと嫌な音を立てているけれど、今の私には関係無い。

 もう何日も何も食べてないからお腹も空いて、喉もカラカラ、寝る間も惜しんだから眠気で頭も痛い。

 だけど、この歩みを止める訳にはいかない。縋れるものはこの先にいる人だけだから。

「おいお前、いい加減にせんか!既に許可は貰った、あとは我等に任せろと言っているだろう!」

 隣で歩く魔物は親切心でそんなことを言っている。だけど、私はこのソリから手を離すことは無いし、離したとしても他の誰かに託すなんてことは絶対しない。

 責任と想いを、誰かに渡したりなんてしない。


 もう心身ともに耄碌してきた頃、やっとその場に辿り着いた。

「……ほう、貴様がこの城に単身乗り込み、おかしな事を言い出した愚か者か。」

「………。」

「この者の要件は、後ろのソリに積まれたモノのようです。」

「成程、そんなものを後生大事にする様な輩の目的はハッキリしている。だが、なんの代償もなくここに来たわけではあるまいな?」

「……何でもします。私はその責任と覚悟を持って、ここまで来たから。」

 私はちょっとでも気を抜けばそのまま倒れ、もしかすると二度と目覚めることが出来なくなるような状態で、

 それでも、全てを投げ出す覚悟を伝えた。

「ふふふ……面白いやつだ。だがその体は限界が来ておろう、まずは休め。そして、それから先は貴様次第だ。」

 その人は気分を良くしたのか含み笑いをして、マントを翻した。

 それを見た私は一気に力が抜け、そのまま倒れ込む―――。

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