第20話 陰謀の黒幕
「なんだ、そっちからは来ないのか?ならこっちからいかせてもらうよ。活力魔法。」〈
ズドーンとエネが放った威嚇の一撃はみんなの間を一瞬で横切った。500段以上ある階段の下の木々がバキバキとなぎ倒れる音が聞こえてくる。
「み、見えなかった...」
「魔法の発動スピードが桁違いすぎる...」
5人はますます怖気づいてしまった。
「やれやれ、さっきの気力はどこへやら。まぁ、こんな所では派手に戦えないだろう...」
そう言うとエネはものすごい爆風を起こし、みんなを階段下の森へと吹き飛ばした。
「くそっ、やってやんよ!!」
5人は地面に着地すると、上から向かってくるエネに対して攻撃を開始する。
「くらいやがれ!!」〈
〈
「ハッハッハ、いい攻撃だ!」〈神の
レイとウェントの攻撃をエネは両肩の上あたりから出した2本の強烈な稲妻でいとも簡単に相殺する。
「まだまだ畳み掛けるわよ!」〈虚空振動〉
〈
〈
エネが地面に着地すると、すかさず残りの3人が攻撃を畳み掛ける。
しかし、この攻撃も簡単に手で払われてしまった。
「杖も持たずにポンポンと魔法を使うなんて...」
「やっぱり別格...」
「うーん、新人さんにしてはなかなかな攻撃ねぇ。このままいったらすぐに
エネがそう言った次の瞬間、ドンッと目にも留まらぬ速さでレイの元まで移動して、レイを蹴りとばした。
木々をなぎ倒しながら飛んでいくレイ。
「!?レィ...」
「よそ見してる場合...か!!」
レイに気をとられたウェントにエネが軽く掌底を突き出すと、凄まじい爆風と共にウェントが吹き飛ばされた。
「全く、技を使うまでもないな。」
ほぼ一瞬の出来事に残りの3人は何が起きたかわからず、固まっている。
「あんたの好きには...させないわ!」〈
それでもネリンは勇気を振り絞ってエネを宙に浮かせる。
「おぉ、すごい干渉力だねぇ。でも...」
ネリンがエネをそのまま地面に叩きつけようとすると、
「まだまだ貧弱ね。」〈
と、電磁気を帯びた衝撃波によってフラクタと共に飛ばされた。
「うわぁ!!」
「きゃぁ!!」
かろうじて能力で防御したため、深い傷は負わずにすんだがかなりダメージを負っている。
「うぅ...」
「だ、大丈夫...ネリンちゃん。」
「平気よ、フラクタちゃん。アタシは大丈夫。」
何とか立ち上がるネリンとフラクタを見て、ヴィジは心配そうな表情を浮かべた。
そして、
〈
と、ヴィジはエネの
「なにこれ、力が入らない...でもまぁ、こんな小細工でどうやって倒すんだぁ?元気なのはお前しかいないんだぞ?」
「どうやってって...僕は独りじゃない!!」
「なに?」
エネが振り向くとレイとウェントが立っていた。
「レイ!ウェントくん!」
「任せろ!俺たちが徹夜で考えた合体技ァ!」
「いくよ!!」〈〈
レイとウェントは赤黒い炎に紫色の稲妻を
その衝撃で砂埃が舞い、木々がザワザワいっている。
「ハァハァ、これで傷くらいついてくれるといいけど...」
5人が様子をうかがっていると、
「フ、フフフ、ハッハッハッハッハ。」
と、砂埃を吹き飛ばしエネが出てきた。身体には傷一つついていない。
「今のはいい攻撃だったなぁ。ちょっとは熱かったぞ。」
「そ、そんな...」
「どうした?あたしにはまだ時間があるんだ...もう少し楽しませろよ!!」
エネはどんどんハイになっていっている。今は戦い以外眼中に無いようだ。
5人はエネを止めるべく戦いを続けた――。
「くっ...」〈
「遅いんだよ。」
「ぐはぁぁ!」
戦いを始めてから早10分。5人はもう立てないほどボロボロになっていた。
「だいぶ手加減してるのに、やはり弱いな...
ビームを使うお前は威力と攻撃スピードはあるが敏捷性がない。
炎魔法を使うお前は攻撃スピードと発動スピードが遅い。
よく分からん能力を使うお前は威力が凄いだけでスピードがない、無用の長物だ。
ハンドパワーのお前と衝撃波とか光を使うお前は決定打に欠けている。
こんなヤツらを気に入るなんて、何考えてんだあの人達は...」
「お前...」
「ん?」
「お前は何がしたいんだ?ミル様達は今日は帰って来ないかもしれないんだぞ。」
何とか時間稼ぎをするためにレイは質問を投げかける。
「そんなこと知ってるさ。あたしはダクラの次くらいには権力を持っていたからねぇ。あの人達の事情はちゃんと把握してるんだよ。」
エネは不気味な笑を浮かべながら話し始めた。
「あの人は毎年、中秋の名月の日は
「え?大事な会議って...」
「そんなの言い訳に決まってるじゃない。仮に本当に会議があったとしても、今日は帰ってこない。」
「じゃあなんで...」
「お前達は何か勘違いをしているな。あたし達の『攻撃対象』についてだ。」
5人はそれを聞いて息を飲む。
「そもそもあの人達がいるところでこんなことしても失敗するに決まってる。だからあたしはあの人が確実に留守で、その上大魔法の発動条件を満たしているこの日を狙ったのよ。
あたしが消し去りたいのはあの人達じゃない。それ以外の全て。あの人達の大切なもの全てよ!」
「でもそんなこと...」
「
「「ッ!?」」
「ある程度の強い念があれば、その規模に応じた概念も消し去ることができるのよ。実際カタルシアは自分の力を犠牲にして『革命戦争』を終わらせた。
あたし達が消そうとしているのはあの人の大切な『ミル軍の隊士達』だ。これは魔法陣の範囲外にいる隊士も対象。あいつの...あのニヤけた顔がどうなるか、楽しみで仕方ない!!」
エネのとんでもない話に5人は困惑している。
「そんな...さっきナリシア先輩は60人では数が足りないって言っていた。それはどうなんだ?」
「なぁに、簡単なことさ。要は必要な念が集まればいい話だ。ここで言う念とは『ミル軍の隊士への憎悪』だ。
お前達でも聞いた事があるだろ?人が死ぬとき、一瞬にしてものすごい量の念が解放されると。
「おい、それってまさか...」
「気づいたようだね。そう、この戦いで『ミル軍の隊士』に殺されることによって念は満たされる。要するに生贄だ。2、3人も死ねば魔法発動に必要な念は確保できる。
そして、今の戦死者は6人だ。」
その話にに5人は言葉を失った。そして絶望に呑まれていく。もう心も折れかけていた。
「もうわかっただろ。魔法は魔法陣の中心...監視塔からいつでも発動できる。無駄な抵抗だ。」
みんなはもう戦意喪失して立つ気力も残ってない。
エネがそう言って監視塔へ向かおうとしたそのとき、パァーっと結界が破られた。
「何事だ!?」
みんなが上を見ると、1人の隊士が浮いている。キラキラとまるで星のようなオーラを纏った誰かが。
「「ステラ先輩!?」」
「ステラさん!?」
「ちぃ、なんでお前がここに。」
目を凝らして見ると、そこには凛々しいステラの姿があった。
「みなさん無事ですか!?」
ステラはそう言うと、ストンと上から降りてきた。
「!?あなたは...エネ先輩...なんですか?」
「久しぶりだなステラ。能から
「なるほど、大魔法の主要術者...事件の黒幕はあなただったのですね。」
「どうしてこいつらが危険だとわかったんだ?」
「わたくし達は3分ごとに定期報告をするよう支持されています。それなのに意味深な質問を皮切りに連絡が途絶えたのなら、それはそのような状況になっていると推測できます。」
ステラは攻撃態勢をとる。
「ふん。まぁ、ここまでは想定内だな。さぁ見せてみろ!!お前の力を!!」
エネも攻撃態勢をとり、ついに
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