回帰○(リターン・ゼロ)~平凡な俺の前世が『神』だった~
トランス☆ミル
第一章 新たな人生の始まり編
第1話 原点
20xx年、地球。俺は特に何事もない平凡で、所在無い日々を送っていた。
昼下がりの公園のベンチで、ただボーッとしながら、ひたすら歌詞を考えていた。
俺は音楽家を目指していた。
平凡な日々...俺は何をしてんだろう...俺は何者なんだろう...
そう、物思いに耽ることが多々あった。
「今日も平和だな。」
そう独り言を呟いて、静寂の中、五感で大地を吸収する。毎日のルーティーンだ。
ペンとメモ帳を持って空を見上げる。相変わらず歌詞は浮かんでこない...
しかし、今日はいつもと違った。そんな静寂はすぐに破られた。
「おーい!そんなところで何してんだ?」
突然横の方から声がした。話しかけてきたのは男女4人組の中の男だ。ちょうど同い年くらいに見える。
「...ただ自然に身を任せながら、作詞をしてるのさ。」
俺は少々音楽家気取りな口調でそう答えた。すると、
「作詞だって!?じ、実は俺たちはバンドサークルで、ちょうどもう1人、作詞作曲できるヤツを探してたんだよ。よかったらバンドに入ってみないか?」
と、言い出した。
予想外の言葉に俺は唖然とした。
だが、それと同時に何かが心の底から湧き上がってきた。
所在無い日々が終わりを迎える予感...でも...
妙な感じがした。どこか懐かしいような雰囲気が漂っている。
既視感――。
しかし、考えるよりも先に言葉が出た。
「こんな平凡なヤツで良ければ...」
こんなお誘い、断る理由が見つからない。
「平凡なヤツだなんてことは無いさ。夢に向かって努力してるだけで素晴らしい事だよ!」
「そう言って貰えて嬉しいよ。でも...俺は今この瞬間まで未来の自分を想像できなかった。自分が何をしたいのか、何者なのか分からなかった。」
俺としたことが、自然と今までのネガティブな感情が出てしまった。それでも彼は優しく、
「それなら良かったよ、俺らが君の役に立てて。自分探しなんてこれからさ。」
と、言った。なんていい人なんだと思った。
しかし、彼はこう続けた。
「▋▋▋▋▋▋▋▋▋▋▋▋」
その瞬間、頭に電気が走った気がした。
既視感の正体。忘れたはずの過去。
そうか、俺は――。
◇◇◇◇◇◇
~遥か昔にて~
僕の名前はヴィジ。この世界のことを何も知らない。
いつ、どこから、どうやって生まれたのか。
僕は物心がついた時から人々に追われている。みんな僕のことを『バグ』と呼び、迫害されている。殺されそうになる。
僕は同じような境遇の仲間を数人集めて、廃墟を
まぁ、娯楽なんて限られているため必然的に知識がついた。
「バグとは、この世界の不具合によって発生するもので、人々に害を成す存在で、僕たちは何故かこのバグと間違われ攻撃されているらしい。
でも、気にすることはないよ。君たちは優しいし、いつか解り合えるさ。」
僕は度々みんなにそう言い聞かせていた。
「じゃあ、行ってくるね!」
生きるためには食料が必要不可欠だ。なので街まで行って食料を調達しなければならない。
自己調達は法で禁止されているため、危険だがこれが1番安全な選択だ。
食料調達はちゃんと人の形をしている僕の役目だ。
バグであるかどうかは、基本的に首から上にある『
14種類あるみたい。
出かけるときはいつも偽の模様を描いていた。
まだ少し涼しい早朝の市場に着くと、いつものように買い物をした。街外れにあり少し廃れている。
この市場では物々交換が主流なので、廃墟にあるもので食料を得ていた。
「おばあさんこれください。」
「はい、どうぞ。」
この辺は年寄りが多く、そう簡単にバレることは無いだろう。そんな事を思っていると、おばあさんが突然、
「そういえば、最近この辺でバグが発見されたそうよ。怖いわねぇ。」
と、言い出した。僕は嫌な予感がした。
そういえば、昨日から仲間の1人が見当たらないな。
廃墟の敷地は広いため見つからないことは珍しいことではなかった。しかし、動悸が止まらない。
「ご、ごめん。ちょっと用事思い出した!」
そんな決まり文句みたいなセリフを吐くと、一目散に住処へ向かった。
嘘だよな...そんなわけ無いよな!
そう自分に言い聞かせながら走る。
住処に着くと、そこには誰もいない。いつもはご飯を待っている場所にも。遊び場にも。
バグは死ぬと跡形もなく消滅する。
「どう...して...」
僕が呆然としていると、奥の方から人の声が聞こえてきた。
「これで全部ですか。」
「いや、油断するな。まだ隠れてるかもしれん。」
大人の男の声だ。仲間じゃない。急いでこの場を離れようとすると、
「ん?そこにいるのは誰だ!」
と、見つかってしまった。
終わった。死んだ。今まで追いかけてきた一般市民とは訳が違う。あのオーラ。あの姿。間違いなそういう人達だ。
僕は全力で逃げた。が、逃げ切れると思っておらず半ば諦めていると、路地裏から突然誰かに腕を引っ張られた。
「こっちだよ。」
その人は白いローブを深く被っているような見た目だった。なんだか不思議な雰囲気だ。
そして、引っ張られた先は暗闇だった。
「撒けた...のか?」
「もう大丈夫だよ。」
「ありがとう...君は?」
「名乗る程の者じゃないさ。それより、君に助言をしてあげよう。」
「...助言?」
僕は疑いながらもその助言を聞くことにした。
「この道をまっすぐ走りなさい。そうすれば、あなたの人生は変わるでしょう。」
「...それってどういう――。」
聞こうとした時には既にその人はおらず、目の前には光る一本道だけがあった。
...くそっ。なんだ。この世界はなんだ。この世界はどうなっている。知りたい。全部。僕は何者なんだ――。
そう心の中で叫けびながら走った。自分の無力さを痛感しながら。
――周りが明るくなり、ふと前を見ると、そこには巨大な異形の怪物がいた。
「な、何だこの化け物は!?」
足がすくんで動けない。恐怖で足が震えている。
するとそこに、
「大丈夫か?」
と、誰かが駆けつけてきた。
「このバグ、相当強いぞ。」
「私たちだけでやれるかどうか。」
2人の男女だ。長髪の女に短髪の男。白い隊服を着て、年も変わらないくらいに見えた。
そして僕の前に来ると、怪物との交戦を開始した。
「こいつ硬ぇ。これならどうだ!」〈
白い稲妻が空気を切り裂く。
しかし、怪物は多少怯むもそこまでダメージを負っていない。
「私たちの力じゃ足りないわ。」
「くそっ、まずいな。」
苦戦している?
そう思って見ていると、怪物の触手の様な攻撃が攻撃がこちらに飛んできた。
「あ、危ない!!」
やばい。死ぬ。今度こそ――。
僕はとっさに手を前に突き出した。
受け止めきれるわけもないのに...と言うのは間違いだった。とてつもない轟音と共にものすごい衝撃が広がった。
「あれっ?僕はなにを...」
見ると怪物は消滅していた。
「き、君はいったい。」
2人が唖然としている。すると、
「あれ?君、象徴がない...」
と、言い出した。しまったと思った。知らぬ間に象徴が消えていたみたいだ。だが次の瞬間、
「お目にかかれて光栄です。我らの神よ。」
と、続けた。
「ど、どういうことですか?」
状況が飲み込めず戸惑う僕に、彼女は落ち着いた口調で語りはじめる。
「実は――太古の昔。神話の時代に私や彼、その他多くの民を厄災から守ってくれたお方がいまして、そのお方にも象徴が無かったのです。
そのお方の名はミル様。この世界で最も破滅的な力を持った
どうやらミルという存在は、ただのバグでは考えられないほど人に近い謎多き存在で、未だその起源は分かってないらしい。
助けてくれたミル様を信仰しているようだ。
「その方と僕が同じなのですか?」
「間違いありません。一目見て分かりました。その力、
「そ、そうですか。でも、多分違うと思いますけど...」
なんだか不思議な気持ちになった。
僕が受け入れられてる...
「俺の名前はレイ。
「同じく、私はフラクタ。よろしくね。」
「よ、よろしく...」
僕は今までの経緯を説明した。
「なるほど。確かにバクによって滅ぼされた地方の人々は神経質になっている。だが、味方もいるってことを忘れるなよ!」
レイが胸をドンと叩いて見せた。
「ありがとうレイ。」
「ミル様と同じだなんて、ヴィジくんはホントに何者なのかしら。」
フラクタは目を輝かせている。そして、
「それはさて置き、祓魔師についてだったな。簡単に言えば、祓魔師はこの世界を守る軍隊だ。」
と、レイとフラクタが祓魔師についての説明を始めた。
「この世界。
ちなみにここは天界よ。」
「あっ、本で読んだことがある。天界と地界にはそれぞれ特殊な能力を持つ上位種、
「そう。そして力を持った天者、地者から構成される、
「さっき話した大君主が支配者兼祓魔師のリーダーで、私たちのトップがミル様よ。」
2人は僕に世界のことを教えてくれ、最後に、
「お前をミル様に合わせてみたい。良かったら一緒に来ないか?」
と、祓魔師への入隊を提案してきた。
「ぼ、僕が、君達と...?」
それを聞いた瞬間、心の底から気持ちが溢れ出してきた。
なんということだ。あの人の助言。世界を守る?これは...所在無い日々が終わりを迎える予感...
「こんな僕でよければ...」
新たな人生。神がかった僕らの物語は、まだ始まったばかり。
僕はまだ知らぬ
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