太古の魔王が復活しようと、俺の不滅は揺るがない ―影の英雄譚―
戸部
序章
第1話転生し得たもの
異世界転生。正直、転生なんて全然考えていなかった。
死んだらそこで終わりだと思っていたからだ。だが、今の俺は――確かに異世界に転生している。そしてこの世界で、もう16年間も生きてきた。
その間にわかったことがある。俺は誰も気づいていないだけで、不壊の体を持ち、攻撃するたび力が増すチート能力を持っているのだ。
――いや、正確には16歳になった今、ようやくこの世界がどういう仕組みで動いているのかを理解し始めたところだ。
この世界では、役職が人の価値を決める。
王族や貴族は絶対的な権力を持ち、聖騎士は尊敬を集める。冒険者や狩人はまぁまぁ。市民は下民扱い。獣人に至っては、人間ではない存在として奴隷にされる。
学校に通えるのは、学力のある市民だけだ。学力のない者は働くしかない。店を切り盛りするか、下働きをするか。それがこの世界の「理不尽の具現化」だ。
貴族は神同然。市民は崇めるしかない。崇めなければ反逆者とみなされる――そんな世界だ。
だが、転生してチートを手に入れた俺が、このまま市民Aとして一生を終えるわけにはいかない。
せっかく手に入れた力、何かの役に立てられないだろうか――そう考えながら、今日も街を歩いていた。
王城前では、週に一度の奴隷市場が開かれていた。
獣人たちが鎖に繋がれ、売り物として並べられている。女獣人は貴族に買われ性奴隷にされ、男獣人は雑用や戦力として扱われる。
俺には関係ない話――ではない。少なくとも、見過ごす気にはなれなかった。
その中で、一際目を引く猫耳の少女がいた。
鎖に繋がれながらも必死に逃れようと手を伸ばし、力の限り抵抗している。恐怖と諦めが混じった瞳――見ていられなかった。
「親ガチャはどうでもいい。でも、この奴隷システムは見過ごせない」
俺は身バレを恐れ、ローブを羽織って群衆に紛れながら奴隷市場へ近づいた。
気づけば、猫耳の少女以外の獣人たちはすでに取引を終え、連れて行かれていた。
目の前の少女にだけ視線を向け、俺は軽く手刀を振る。
――鎖が音を立てて千切れた。少女は驚き、目を大きく見開く。
「安心しろ、もう大丈夫だ」
そう言いながら手を引き、彼女を連れてその場を離れようとした瞬間、背後から鋭い銃声が飛んできた。
貴族の兵士たちだ。拳銃が俺に向けて放たれる。
だが――俺には通用しない。
弾丸は俺の体に触れることなく地面に散る。無傷のまま、俺は少女の手を握り直し、その場を後にした。
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