第2話 氷川 和利(ひかわ カズとし)②
集落の建物はそれほど多くなく、
あいかわらず、手形はいたるところにあった。この建物は特に念入りだった。しかし、どの手形も、ありえない所や場所にはなく、
「ここまでだな。中見たらそろそろ引き返そう」と、俺は言った。出来るだけ
建物の入り口から
「村の集会場ってやつかな?」
玄関の先には長い廊下があり、左右に戸口がある。左手は広間。右手は台所など水場。ここにも先客の
広間へ足を運ぶ。大きな
懐中電灯の光は浮遊する
「苦しい…」そう言ったのはレイだったか、ユウだったか。
言われてみれば…、俺も気づいた。建物に入ったときから何かの気配を感じていた。空気というより、水の中を歩いているような密度。耳鳴りがするのは、他の人の
広間の中は真っ暗だった。しかし、建物の
ショウタの照らす光が止まる。
そこには、人の形をした何かが置かれていた。赤ん坊くらいのサイズだったが、確かな存在感を放つ人形だった。
形容しがたい
なんといえばいいのか、不自然だった。
ここの雰囲気に合っているとは言い難いほど真新しく、風化の影響を受けていない。姿勢も座るでも立つでも寝転ぶでもない
顔と呼べる部分は何か白く。目が異様に大きかった。
「なかなか…」とレイがつぶやく。俺を含め、皆の肝試しの熱が冷めていくのを感じた。変な人形も見たし、怖い雰囲気も味わった。そろそろ潮時だ。帰ろう。
皆に声を掛けようとしたとき、ミサの様子が少しおかしいことに気が付いた。
その人形を見つめている。長い間、じっと見ていた。そして、何も言わずに、それを手に取った。
「持って帰るの?」と俺が尋ねると、 ミサは少し笑って「かわいいじゃん」と答えた。 その笑顔は、どこか引きつっているようにも見えた。
(続く)
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