第2話「過去」
今日は月曜日、部活の日だ。
俺達、進堂高校野球部は週5で活動している。休みの日は、水曜と日曜だけだ。
だが、野球は楽しいので苦ではない。
高橋は、ストレッチを"念入りに"していた。
高橋には他の部員とは違い、ピッチャー用の別トレーニングが用意されていたのだ。
しびれを切らした菅原が声を掛ける。
「まだか?」
菅原は、キャッチャーのため高橋と一緒にトレーニングをするのだ。
高橋が菅原に応えた。 「あと少し」
なぜここまで高橋が、ストレッチをするかって?
それは小学生の頃に遡る。小学生の高橋は、まだ右投げだった。
ある試合で投げるまでは。
その日は、朝から肘が痛かった。
小学生の高橋は、ストレッチ不足による怪我でしばらく投げていなかった為、復帰後の久しぶりのピッチャーで喜んでいた。だから肘が痛いのは誰にも言わなかった。
試合が始まった。高橋は先発で3回まで投げる予定だった。最初のイニング、フォアボールは出したものの、あとの3人を三振に抑えた。
これがいけなかった。
高橋は、肘が痛くても投げれることを知り、3回が終わっても続投を監督に頼んだ。
そこで監督はOKをだしてしまった。この後何が起きるかは、まだ誰も知らない。
4回のマウンドにたった高橋は、もう既に42球も投げていた。怪我から復帰した人が投げる球数ではない。高橋は最初のバッターを、ツーツーのカウントまで追い込んだ。
だが、次の球が抜けてデットボールとなった。高橋はとうとう異変に気がついた、右腕が途中までしか上がらないことに。高橋の腕はとっくのとうに限界を迎えていたのだ。
高橋は言うことの聞かない右腕で、またボールを投げようとした。しかし、高橋はボールを投げることができなくなっていた。高橋は交代を告げられた。
絶望に陥っていた高橋は、悔しさをバネに左投げを特訓し、今に至るのだ。
こうした経緯により、ストレッチの重要性に気付かされたのだ。
ストレッチを終わらせた高橋は、菅原をブルペンに座らせていつも通り、投球練習を始めた。
高橋は、その1球1球を大切に投げていた。
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