第24話 召喚獣グレゴル

 森を更に進むと、崖に橋がかかっている。


 その橋横にある綱はしごを使って、崖の下に降りた。



「そう言えばウィーザードボードを使っていれば早かったなぁ」と僕。


「怖かったのにぃ・・・!!」とリーリ。


 面々が苦笑。


 崖と言っても、そんなに落差はない。


 まぁ、飛び降りたら膝とかを壊すかもなぁって感じの落差だ。


 崖下には特に植物ははえていない。



「ここらへんに・・・いるのかな?」



「「グーレゴールっ!!」」とカルロリナスとアデルが叫ぶ。



 軽快な足音が聞こえて来て、岩陰から出てきたのはグレゴル。


 翼を持つ、猫猛獣。


 翼の色はそれぞれ違うようだ。


 

「《案内しよう・・・それから、正式な発音は『グレゴール』だ》」



 父さんの残した記述書には、この場所が記してあった。


 グレゴルの隠れ住処の神殿。


 そこに、『召喚獣:しょうかんじゅう』がいる、って。


 

「《わ~、人間だぁ~》」


 そこにわらわらと現われたのは、グレゴルの子供達。


 とても無邪気で、可愛い。


 群れのリーダーであるグレゴルが「《可愛いだろう?》」とちょっと自慢気。


「なんて可愛いの」とリーリ。


「僕は?ねぇ、僕は?」とカルロリナスが言うと、グレゴルたちが発見。


 顔を見合わせた赤ちゃんグレゴルたちが、突進してくる。


「わーーー!!あんな可愛いのに攻撃は無理だぁーー!!誰かー、たーすけてー!!」


 ひょいっと僕がつまみあげて、肩に乗せる。


「きっと大丈夫だから」


「はぁ~・・・びっくりしたぁ」



「それで、召喚獣って言うのは、リーリが取得するのか?」とアデル。


「そうらしい」と僕。


「少し心配です」とカルロリナスがぼやく。


「皆の役に立ちたい。祈りの場に案内してほしいです、グレゴール」とリーリ。


「《まぁ、いいだろう。責任はとらんからな》」



 リーリを見送るために、小さな神殿の門の辺りまで皆で進む。



 お前達はここまでだ、とグレゴルに言われる。


 リーリは「行ってきます。必ず帰る」そう言って、薄暗い神殿の中に入って行った。



 ・ ・――  ・ ―――――― ・・・――――



 これはリーリから聞いた話をもとに記述する。


 神殿の中は薄暗いけれど、光たんぽぽがかなりいた、と。


 そして光魔法で自分を光らせて、自分の姿を確認できるようにしたらしい。


 『芯間:しんま』と言う聖堂にたどり着き、美しい祈り子を見つける。


 常にお祈りをするかわりに、眠りを選んだひとたち。


 かつてはイケニエと呼ばれていた者たちがいる・・・


 溶かした魔法石液の中で、自分を抱きしめるようなポーズをしている。


 リーリは祈り子に丁寧な挨拶をして、召喚獣が欲しいと願った。



 なんのために・・・?



「守りたい。役に立ちたい。もうすぐ黒竜が目覚めてしまう」



 ・・・代償は、記憶だぞ?



「・・・・・・せめて、彼らのこと、少しだけ・・・思い出したい」



 ほう。まことの仲間・・・


 ・・・お前の人生を見たが、代価は記憶だ。


 苦しかった、お前の過去だ。


 この会話は戦いが終わって目覚めるまで、思い出せなくしておこう。



「・・・えっ?」



 手を組んだ祈りから意外で顔を上げると、そこには半透明のグレゴルの姿。



「《私たちはお前を選んだ。協力しようぞ。外を見てみたくなった》」



「・・・ありがとう!!」




 一方そんなことが起きている時、僕たちはグレゴルに催促をされた。



「《オソレルナの歌を、知ってるか?》」


「「おお、知ってる知ってる!!」」と僕とアデル。


「《俺は歌が歌えないんだ・・・どうか子供達に教えてやってくれ》」



「なに?」とカルロリナス。



 グレゴルの子供たちが言う。


「胡瓜蛇、南瓜顔、茄子の蒲焼き、桃の種・・・メロディが分からない」



 微笑んでアデルを見ると、「親父さんが教えてくれた歌だよな」と僕に言う。


「なんだか嬉しい」


「《そうか、そうか。頼む》」



 ノックするような仕草でコン・コンとリズムをとる。


 僕とアデルが歌った。



 きゅうり へび~


 かぼちゃ がお~


 なす の かばやき


 ももの たね!


 ・・・・・・ん?



「・・・あれ?続きなんだっけ?」


「しらたきがみ?」


「あれ?やばい、ごめん。思い出すのむずかしい」



 グレゴルは意外そうにした。


「《このあと続きがあるのか》」



 そこにリーリがふらふらとして神殿から出てきて、アデルが慌てて支えた。



 リーリは微笑して、「召喚獣、取得したよ」と言って気絶した。


 しばらく眠っていたし、誰も手出しなんてしてない。


 むしろ戦いの予兆に、女子を巻き込んだ罪悪感がしていた。

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