第22話 貴重な書籍

 どうやら石英のはえた書籍は、僕の里、保護区の神父がカイト・オン・ジョニエルにお守りとして渡したものらしい。


 不思議な力を宿している。


 そして英雄、カイト・オン・ジョニエルの記述書。


 それを一旦は渡したけれど、どうも回収したいらしく、追っ手が来た。


 どうも山賊を雇ったらしく、聖域から出てしまった魔法書の気配にうはうはするやつもいるようで、狙われた。


 かいくぐるように対戦して、ふと気づく。


「あっ・・・」


 その時に地面から飛び出た石につまづいて、転びそうになった。


 手に持っていた鉱石本が手の中から落下、咄嗟に魔法石指輪「藏之助」に収めた。


 そうすると鉱石と魔法書の気配は消えて、なんだかそのあとは図書館からの追っ手の奇襲もなくなった。


 驚いたのはカルロリナスの怪力。


 基本的に彼が自分サイズの剣で戦うのは、素手の力がすごいから。


 彼なりの、慈悲らしい。


 どうも離れがたくて滝壺の大樹にいたけれど、冒険にあこがれていたのは本当。


 そして父さんが残した「僕の出現」を確かめたくて、あえてそこにいたらしい。


 つまりは、僕が来たら仲間に入れてもらうことを前提に生きていたらしい。


「英雄になりたい」とカルロリナスは目を輝かせながら言った。



 それから、彼は・・・恋をしている。


 リーリにだ。


 リーリを遠目から見て、ツタで遊んでいてからまったらしい。


「可愛い」と言われたことがきっかけで、恋愛に身体の大きさが関係あるのか気にしているようだ。


 なんだかカルロリナスが仲間に入ってから追っ手の奇襲ばかりだったけど、落ち着いて来ると、夜にカルロリナスがリーリを気にしている感じがものすごくする。


 なんだったら道中、彼は「それがいつなのか」で頭が基本満ちている?


 あとは食事くらいしか気にしてない感じ・・・


 まぁ、リーリがイヤじゃないなら・・・


 そう言えばカルロリナスの食事量は、基本的に僕たち一人前の半分くらい。


 怪力で助けて貰ったりしているし、身軽な動きでそこら界隈の木の実にくわしい。


 なので彼の「英雄になりたい」と言う夢を応援したいと心から思った。


 僕は、物書きでいいのだ、きっと。


 なにしろ図書館の本で育ったカルロリナスの話は面白い。


 リーリを口説くには薬草の話がツボらしいことをしばらくして気づいた彼はぐんと距離を縮めたいと僕とアデルに宣言した。


 身体の大きさ・・・


 嗚呼、空想しそうになってごめん。


 そんなほがらかな日が、魔法書を隠してからは案外と続いた。



 ―・――・・・――― ・ ―――・ ・・



 移動しているのは森の中。


 夜は野宿。


 拓けた場所はないので、場所作りをして焚き火。


 火の番は交代制。


 横になってうとうとしていると、カルロリナスと火の番のリーリの声。


「僕は君が好きだ」


「しっ・・・ふたりとも起きちゃうでしょう?小声で話して」


 その時、アデルの鼻が「ぐご」っと鳴ってしばらく間ができる。


 まぶたを開ける余裕がなく、僕は睡眠に入る前。


「そろそろダメですかっ・・・?」


「そろそろ、って・・・まさか、そういうこと・・・?」



「そうなのです」


「何を言っているの?赤ちゃんできたらどうするのっ?」



「じゃ、じゃ、なんとなく・・・とか・・・」


「・・・え?」



「あの・・・身体が盛りの時期なの気づいています」


「あ、え?うん。え?あ、あ、あ、あの~・・・え?あれ?どこいったの?」



 うそだろう?


 そんな言葉を口に出しそうになった頃、僕は眠りに落ちた。


 焚き火に向いている側だけが妙に暖かくて、不思議な夢を見た。



 ――・・・炎がどんなものなのか?


 美しくて、扱いに気をつけなきゃいけなくて、水が蒸発するかもしれないものだ。



 そのあと、すと目が覚めた。


 何かが夢のあとに「なんだか意外だ」と言った気がした。



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