星間記憶の灯

亜々

第1章 星間港の再会

冷たい真空を切り裂くように、リニアポッドが星間港プラットフォームに滑り込んだ。プラットフォームの天井には覗き窓が並び、遥か上空の宇宙ステーションが淡い青い光を放っている。私はキャリーケースのホバーエンジンを切り、スーツのフードを外した。そこに立つ祖母は、かつて地球で見た凛とした佇まいのままだったが、白銀の髪には微細なナノコートが施され、電飾がわずかに輝いていた。

「帰ってきたね」

祖母の声はデジタルノイズ交じりだった。認知ネットワークの老朽化により、言葉の端々が途切れがちになっている。私は補助インターフェースを取り出し、眉間に当てる小型デバイスを起動した。彼女の瞳がわずかに揺らぎ、脈動し始める。

手を取り合い、私たちは無重力エスカレーターを降りた。星間港の喧騒がすぐ隣の軌道都市まで続いている。祖母の足取りは以前よりも重く、空気スライドに頼る彼女を支えながら、私は自分がここで介護を始める決意を新たにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る