web小説における暴力と性

あんぜ

暴力は楽しいこと

 web小説における暴力と性っていうと、人間の根源的な欲求を煽ることで読者を惹きつける大きな要素のひとつだと思います。第1話を読めば即、暴力や性の欲求を刺激され物語へ引き込むことができます。要は薄い本(エロ同人)ですね。必要な欲求を満たす部分まで即展開するポルノってやつです。


 暴力といっても、力による実力行使以外にも、威圧。矮小化されたイジメ。それから権力。権力を使った理不尽な仕打ち、追放、投獄なんかがそうですね。或いは心への暴力。裏切りやセックスに絡むこと。またそれらに伴う冷笑や愉悦。そういったもので主人公へストレスを与えることで、物語性を生じさせ、読者を惹き込むわけです。NTRエロ同人で導入が楽だからと多用されたのと同じですね。



暴力はよくないのか?


 暴力はよくない。現代社会ではごく当たり前のように謳われています。法律で禁止されていることも理由ですが、現代の倫理感からもよくないとされてます。じゃあ、創作物の上では? とりあえず、法律とか倫理的な話はおいといて、暴力について考えてみます。


 暴力ってのはまず、人間の根源的な欲求に於いて『楽しいこと』だと思うのです。これは威圧・イジメ・権力行使なんかも含めて『楽しいこと』だと感じるのが生き物としての性質じゃないかなと思います。


 以前、『いじめは楽しいと言う話』というノートを書きましたが、元になったTwitter(現×)の投稿は、いじめというものが本質的に楽しい物だということを理解しないと、いじめなんて無くすことはできないという話だったと思います。


 『いじめは楽しいと言う話』

 https://kakuyomu.jp/users/anze/news/16818093076150431358


 私は、『人間は本質的に暴力を振るうのが楽しいと感じる存在だ』ということを自覚する必要があると思います。弱い者をいたぶるのが楽しい、いたぶっても良い理由があれば気兼ねなく楽しめる、味方が増えるほどエスカレートする。そういう部分を理解する必要があると思うのです。


 イジメがなぜ楽しいかというと、生き物としての優位性の誇示、群として足手まといになる弱個体の排除、或いは集団防衛としての攻撃性の維持、いろいろ理由があると思いますが、本質的には生物としての生理的欲求だと思うんですよね。要は、セックスが気持ちいいからやった――ってのと同じ。


 ただ私は別に非暴力主義を唱えているわけではありません。暴力が楽しいという事実を頭に入れておいて欲しいと言いたいのです。



暴力と悪役


 んじゃあ、この生理的欲求に従って動くキャラを考えた場合、いちばん向いてるのが、悪役にされることが多い『暴力的な間男』ですね。主人公から女を奪い、暴力で主人公を排除する。


 イイ女がいたから(主人公から)奪った。生き物の生理的欲求としては実に正しい行動だと思うんですよ。既婚NTRとかだとまだ主人公が法律に守られることもありますけど、BSSだとか未婚NTRの場合はそもそも間違った行動とはとられない可能性が高いです。


 じゃあ、奪われた女の視点では?――と考えると、暴力を行使できる男の方が価値が高いことが多いと思うんですよね。生物としての力だけじゃなく、箔がつく、社会的な権力、あるいは自分の価値を認めてくれる積極性など。そもそもNTRの場合、寝て盗られているわけですから、主人公より性的な魅力があることは間違いないわけです。


 旦那のステータスで自分の価値を語るタイプの女性って居ると思うんですけど、そういう女性にとっては、自分だけに優しい暴力装置ってのは魅力的に映ると思うんですよね。実際、自分にだけ優しいヤクザみたいなジャンルって一部の女性にウケがいいそうです。他にも、ムカついた相手をパートナーの暴力(あるいは威圧)で排除することを正しいと考える女性はSNSとかでよく見かけます。


 あとこれ、女性に限らず男性でも同じことが言えると思います。暴力を主体とした作品なんかでは、自分にだけ味方になってくれる暴力的な男ってのは、男性の場合であっても魅力的に映ると思うんですよね。もちろん、自分自身が強くてオレツエーしてる方が好きという人も居るでしょうけれど。



暴力と主人公


 悪役の振るう暴力は悪い暴力、主人公の振るう暴力は良い暴力――なんていうと皮肉に聞こえるかもしれません。ただ、暴力ってのものの本質を考えれば、安易に暴力による解決を図る主人公ってのも考え物だと思うんですよね。たとえ相手が三下のクズであっても。


 もちろん、暴力でスッキリ解決させた方が読者は喜ぶでしょう。何しろ、暴力ってのは『楽しいこと』なのですから。暴力に頼ることを躊躇し、悩み、解決に踏み込まない主人公はヘタレだのなんだのと罵倒されると思います。


 あ、全然関係ないんですけど私、性格的に同じ物ばかり食べてると身体が拒否反応を示すんですよ。飽きっぽいのとも少し違うのですが、同じような価値観、同じような思考、同じような解決しか図れないキャラばかり見てると吐き気がしてくるんです。



暴力の習慣化


 安易に暴力による解決を図る人間ってのは、割と短絡的思考の人間だったり、或いは嗜虐性の強い人間だったりすることもあります。後天的にそうなったというよりは、生き物としての生理的欲求を抑えられなくなった――と考える方が普通なのかなとも思うんですよね。


 セックスとかも同じで、ヒロインが先へ先へと進んでしまって普通の相手では満足できなくなった。暴力的な間男の欲求に感化されて主人公では満足できなくなった。そういうのもあると思うんです。これも後天的にそうなったというよりは、生き物としての生理的欲求を抑えられなくなった――みたいなものかなとか思います。


 暴力に話を戻すと、感情を自分で押さえられなくなった人間、自分の機嫌を取れない人間ってのは他責的で暴力を安易に使いがちになります。他人を威嚇したり、見た目で力を誇示するのを厭わなくなります。手を出していないから暴力じゃない――ではなく、見た目で威嚇していること自体が力を誇示しているってのを理解できなくなるんですよね。


 例えば日本の場合、入れ墨を入れれば他人からどう思われるか、考えられないような人間は社会不適合者でしかありません。本当に好きで入れたのなら、他人の目は当然のリスクとして受け入れるでしょう。理解を示してもらうために、コミュニケーションにひと手間必要になるかもしれません。


 さらに、安易に暴力による解決を図る人間は、身近な者にも暴力を向けがちです。DVってやつですね。困ったことに、暴力的な男を損切りできない女性ってのは、自立性がない分、DV男に依存しがちです。本人も、自分にだけ優しい暴力装置と勘違いしたままなので、暴力的な男のステータスを自分の価値に置き換えたり。


 そういう女性は見た目は良くても、ちょっとヤベエ女的に見られるのも仕方がないかもしれません。よく、AVを見ていて演者に入れ墨が入ってたり、痣があったりするのを観て、男性視聴者が萎えるってのはそういう背景が見え隠れするからかもしれませんね。



 何か思いついたらまた続けます。







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 時々、こういうのをノートで語ってます。


『クズに力で制裁するってのは定番ですが』

https://kakuyomu.jp/users/anze/news/16818792440193013820


『思うんですけど読者層って』

https://kakuyomu.jp/users/anze/news/16818792439767863600



 あと、関連した話題。


『『新作書いた』なら使ってもいいッ!: テンプレ作品とAI』

https://kakuyomu.jp/works/16817330664088243085/episodes/16818792438783885828






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