告白

私、いろんな人に手伝ってもらってここまで来ました。


都会にあるマンション。管理人さんに言ってエントランス無理やり開けてもらっちゃった。


私、頑張ったのよ。この紙見てよ。あなたの氏名、職業、住所、全部書いてあるの。


初めてあなたの姿を見たのは、確か24日の金曜日。街中をひっそりと歩くあなたのその姿を一目見て、「あ、この人なんだ」って分かった。私の心は熱く燃え上がったの。私、あなたのこと絶対に許さないわ。だって、私をこんな思いにさせたんだもの。


それでね、あなたが写ってる動画、たくさん見た。あなたの行動、あなたの息遣い。あなたの一挙手一投足が私の心を掻き乱したの。


どうして呼び鈴に応じないの?私、とっても悲しいわ。ここまで頑張ってきたのに。あなたの生活リズムはもう知ってる。絶対に部屋にいるはずでしょう?

早く出てくれないと、強硬手段に出ざるを得ないの。


呼び鈴じゃ聞こえないのかも。ノックをしてみましょう。最初は優しく、徐々に過激に、まるで熱を乗せるように。


なかなか出てこないのね。私、無理やり入る。いいよね?鍵にはね、マスターキーっていうのもあるのよ?


部屋の中は散らかっていて、陰鬱で、まるであなたの心のよう。昔の悠々とした暮らしからは程遠い。それも、これも全部あなたが悪いの。あなたが道を外れたのがいけないのよ。


その道を外れたあなたのためにね、私最後の機会を与えようと思うの。素直に出てきてくれたら、ちょっとオイタしたくらいの罪。出てきてくれなかったら、そうね、あなたは弱い人間なの。


あなたが私から逃げ続けるのか、それとも降参するのかを選ぶ最後の機会。人生の大切な分岐点の一つ。ちゃんと考えて選ぶのよ。



ようやく出てきてくれたのね。ほら、あなたへの大切な大切なお手紙。氏名はあってる?私がここまできた事由もあってる?しっかりと見て。これはあなたの罪。


ほら、両手出して?ラブレターを受け取る時は、きっと誰でもそうすると思うの。

恥ずかしかったら布で覆ってあげる。人権は誰にでもあるものよ。


一月二十六日日曜日、午前七時五十一分、容疑者確保。


















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