第25話 妊娠発覚とふたりの決意
9月に入り、新学期が始まった。
キャンプから約2ヶ月。
エリックとリサは、相変わらず研究と恋愛の両立に忙しい日々を送っていた。
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Scene 1:リサの違和感
「おはよう、リサ」
「おはよう…」
ラボで会ったリサの顔色が、少し悪い。
「大丈夫?顔色良くないけど」
「ちょっと…体調が優れなくて」
「無理しないで。休んだ方がいいよ」
「でも、実験が…」
「実験は僕がやっておくから。リサは休んで」
エリックが心配そうに言った。
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実は、リサ自身も気づいていた。
最近、体調の変化がある。
朝の吐き気。
いつもより疲れやすい。
そして…生理が来ない。
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(まさか…)
心の中で、ある可能性が浮かんでいた。
でも、まだエリックには言えない。
確信が持てないから。
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Scene 2:薬局での検査
その日の午後、リサは一人で薬局に向かった。
妊娠検査薬を買うために。
レジで検査薬を手に取る時、手が震えた。
「こちらでよろしいですか?」
店員の声が遠くに聞こえる。
「はい…」
家に帰り、トイレで検査をする。
数分が、とても長く感じた。
結果を見た瞬間、リサの心臓が跳ね上がった。
(陽性…)
手が震える。
涙が溢れてきた。
(赤ちゃんが…できてる)
喜びと不安が入り混じった感情。
(どうしよう)
(エリックに、何て言おう)
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Scene 3:リサの葛藤
その夜、リサは一人で考え込んでいた。
ベッドに座り、お腹に手を当てる。
(まだ何も感じないけど…ここに、小さな命がいるんだ)
嬉しい。
でも、怖い。
まだ学生で、結婚もしていない。
研究も途中。
(でも…)
リサの心の中で、一つの気持ちが強くなっていく。
(この子を、産みたい)
(エリックとの子ども)
涙が止まらなくなった。
(エリック…どう思うかな)
(受け入れてくれるかな)
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Scene 4:エリックへの告白
翌日、リサはエリックにメッセージを送った。
『今日の午後、少し話したいことがあるの。時間ある?』
すぐに返信が来た。
『もちろん。どこで会う?』
『私のアパートに来て』
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午後3時、リビングのソファーで待つリサ。
緊張と不安で心臓がドキドキしている。
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玄関のインターホンと同時に、エリックがすぐに室内に急いで来た。
「リサ!大丈夫?」
「ええ。体調の方は、今はおちついてるわ」
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二人は並んでソファーに座った。
しばらく、沈黙が続く。
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Scene 5:告白の瞬間
「ねえ、エリック」
「うん」
「大切な話があるの」
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リサが深呼吸をする。
「私…妊娠してる」
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エリックの目が大きく見開かれた。
「え…」
「赤ちゃんが、できてるの」
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エリックの顔から血の気が引いた。
「本当に…?」
「昨日、検査したの。陽性だった」
リサの目に涙が浮かんでいる。
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「キャンプの時の…」
「多分、そう」
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Scene 6:エリックの反応
エリックは、しばらく言葉が出なかった。
頭が真っ白になる。
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(赤ちゃん…)
(リサのお腹に、僕たちの子どもが…)
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「ごめんなさい…」
リサが小さく謝った。
「私、どうしたらいいか分からなくて…」
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その言葉で、エリックは我に返った。
「謝らないで」
エリックがリサの手を握った。
「これは、二人の責任だから」
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「でも…」
「リサ、僕は…」
エリックの目にも涙が浮かんでいた。
「嬉しいよ」
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Scene 7:エリックの想い
「本当?」
リサが驚いて顔を上げる。
「うん。びっくりしたけど…でも、嬉しい。僕とリサの子どもだし、君と家族になれる!」
エリックが涙を流しながら笑った。
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「怖くない?」
リサが聞いた。
「怖いよ、すごく。でも、それ以上に嬉しい気持ちの方が強いよ。」
エリックが正直に答える。
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「リサは…産みたい?」
エリックが慎重に聞いた。
「…うん。産みたい」
リサが頷く。
「あなたとの子ども、欲しい」
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Scene 8:二人の決意
「じゃあ、結婚しよう」
エリックが真剣な顔で言った。
「え…」
「ちゃんとしたプロポーズは、改めてする」
「でも、今、約束する。責任は僕にある」
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「僕は、リサと結婚して、君と、赤ちゃんと、家族になりたい。そして、一生、守り続けたい」
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リサの涙が溢れた。
「本当に?」
「本当だよ」
「ありがとう…」
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二人は抱き合った。
強く強く、お互いの温もりを確かめながら。
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Scene 9:これからのこと
「でも、どうしよう」
リサが不安そうに言った。
「研究は?学位は?」
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「大丈夫。一緒に考えよう」
エリックが優しく答える。
「僕も、まだ博士課程だし」
「でも、二人で協力すれば、なんとかなる。それに、教授や大学にも報告して、情報を集めよう」
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「家族にも、報告しないと」
「うん。怒られるかな」
「多分ね」
二人は苦笑した。
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「でも、ちゃんと説明しよう」
「僕たちは本気だって」
「赤ちゃんを、幸せにするって」
「うん」
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Scene 10:病院へ
「まず、病院に行こう」
エリックが提案した。
「ちゃんと診てもらわないと」
「そうね」
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「明日、一緒に行ける?」
「もちろん」
エリックが力強く頷く。
「これからは、全部一緒だよ」
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リサが嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとう、エリック」
「こちらこそ。君が、僕を選んでくれて」
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Scene 11:夕暮れのなかで
「ねえ、エリック」
「ん?」
「私、これからの事、怖いけど…でも、幸せでもあるの」
「僕もリサと同じ気持ちだよ。これから大変なことも、たくさんあるだろうけど、でも、君と一緒なら乗り越えられる。」
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リサがエリックの腕に頬を寄せた。
「家族になるのね、私たち」
「うん。三人家族」
「素敵ね」
「本当だね」
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Scene 12:夜のメッセージ
その夜、エリックは部屋で一人考えていた。
(僕は、もうすぐ父親になる…リサと子どもを守らなくてはならない。それから、博士課程も、お金のことも……)
実感が、喜びと共に、少しずつ湧いてくる。
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(怖いな)
(でも、頑張らないと)
(リサと赤ちゃんのために)
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スマホを見ると、リサからメッセージが届いていた。
『今日は本当にありがとう。あなたがいてくれて、安心した』
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エリックが返信する。
『こちらこそ。明日、一緒に病院行こうね。愛してる』
『私も愛してる。おやすみ』
『おやすみ』
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エピローグ:新しい命
小さな命が、リサのお腹の中で育ち始めている。
まだ誰も気づかない、小さな存在。
でも、確かにそこにいる。
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エリックとリサの愛の結晶。
これから始まる、新しい物語。
不安も、喜びも、全てを抱えて。
二人は、親になる道を歩み始めた。
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