父と娘ひとつの夜

ヤスぽろ

第1話 昼飲み

歳のせいなのか、それとも習慣のせいなのか──

毎朝、iPhoneのアラームよりも早く目が覚める。


今日は一週間ぶりの休日だ。半年に一度、先輩たちとの「昼飲み会」が梅田である。私はその中で一番年下になる。


身支度を整え、車に乗り込む。

職業柄なのか、昔は初対面の人から「若く見えますね」とよく言われたものだが、最近はまったく言われなくなった。


久しぶりに走る高速道路。渋滞はしていないが、空いているわけでもない。それでも快適だ。

若い頃は、仕事終わりにドライブを楽しんだり、休日の朝は洗車に時間をかけたり、典型的な車好きだった。東京ディズニーランドへも下道で往復したことがある。

しかし今は近場の移動ばかり。車は小さくなり、視力も落ちてメガネが手放せない。駐車場探しにも少し戸惑うようになった。


梅田の居酒屋に到着。

「食べ放題・飲み放題」と掲げられた店は、昼間は料金も手頃で清潔感がある。おじさん世代にはちょうどいい。

メニューも見やすく、店内には食欲をそそる匂いが漂う。お腹が空いてきた。

久しぶりに訪れる街の音や匂いが、どこか懐かしく感じられる。


店を手配してくれたのは、すでに仕事を引退した最年長の先輩。

ネットで調べたみたいだ。

時代の変化を感じる。

そして先輩方はいつもながら身なりをきちんと整えている。軽くて暖かそうなダウンジャケットを新調し、わずかに白髪染めの匂いを残している。そんな些細な変化に私たちは敏感だ。とても若々しく見える。


梅田は美しく整っていた。

高層ビルのガラスは青空を映し、植え込みはきれいに刈り揃えられている。道にはゴミ一つ落ちていない。街の清潔さと秩序に、少し安心しながらも、昔との変化を思い出す。


こうしておじさんたちは昔と変わらず集まり、グラスを傾ける。

ただ、時間が昼間になっただけだ。若い頃の自分なら「昼間からお酒を飲むなんて」と眉をひそめただろう。

だが今は、この時間こそがかけがえのないものに思える。

いつまで昼飲みに参加できるかわからない。けれど、最後まで付き合うつもりだ。──下戸ではあるが。

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