0022 イベントと幻狐

「あっ、陽毬からだ」


『紬くん!そっちはどう?こっちはこの15分でとりあえず2つのダンジョンを攻略してきたよ!迅くんによると、私たちもスレで話題になってるみたい。また何かあったら連絡するね!陽毬』


「わっ、めっちゃハイペースだ。このままじゃダンジョン30個くらい攻略しちゃいそうだなぁ……」


紬はそう言いながら、メッセージを閉じる。


「僕も頑張らなきゃだなぁ……とりあえずこっちきてるプレイヤーやりますか……」


紬は近くまで来ているプレイヤーを目掛けて走り出した。

プレイヤーが反応する前に、短剣で連撃を加えてHPを削り取る。そのプレイヤーと共にいた3人のプレイヤーも驚いて固まっているうちに火球で全員街に送り返した。


「幻狐……頑張ってね……」


◇ ◇ ◇


「なんだ……?あいつら……」

「お前……!あんまジロジロ見るな……!」

「なんでだよ?」

「このスレ見てみろ……!」


そう言ってひどくあっせた様子のプレイヤーは、スレの画面を見せる。



【ガチ謎】謎の仮面集団現る


1.名無しのプレイヤー

イベントが始まってから各地で狐の仮面をした謎の3人組が目撃されている模様


2.名無しのプレイヤー

それ見たわ。一瞬でダンジョン攻略しててマジでびっくりした


3.名無しのプレイヤー

ダンジョン攻略……ってことはプレイヤーか


4.名無しのプレイヤー

そいつらワンチャン、イベントの重要NPCの説ある


5.名無しのプレイヤー

確かに


6.名無しのプレイヤー

他に情報あったら書き込む感じで


98.名無しのプレイヤー

速報!狐の3人組の他にあのスライムダンジョンでも狐の仮面を被った何かを目撃したらしい。しかもプレイヤー倒してるとか


100.名無しのプレイヤー

普通にエグくて草。絶対なんかあるやろ、狐の仮面


101.名無しのプレイヤー

とりあえず近づかんほうがいいかもだな



このスレは、イベント開始と共に、公式がなんの通知もなくゲーム内でもスレを使えるようにした後に作られたスレのため、ゲーム内でも見ることができる。このスレは、紬のダンジョンのスレを追い抜かし、急上昇ランク1位となっていた。


「わかっただろ?あいつら、例の軍団だって!」

「お、おう。まあ関わらないでおくわ」


2人のプレイヤーはその場から居心地が悪いかのように、そそくさと離れていった。


「はぁ、なんか避けられると心いてぇわ」

「仕方ないでしょう。紬の作戦なんだから。それにこの仮面可愛いじゃない」

「どこがだよ……」

「私も可愛いと思うけど……」

「はぁ……」


狐の仮面を被った3人組というのは、迅と陽毬と茜のことである。

3人は紬と共に同じ狐の仮面をイベント中に身につけることで、イベントと何か関係があるのではと思わせて、紬のダンジョンに人を呼び込むという作戦だった。

さらに、3人は3人でイベントの上位に入ろうと頑張っていた。


「でも、俺らの名前はかっこいいよな!幻狐げんこ、いい名前だよな……」

「好きだねー」

「紬のネーミングセンスはピカイチだぜ!」


迅は紬のネーミングセンスが壊滅的で、幻狐が紬の姉によって考えられたものであるということを知る由もなかった。


「とりあえず、ダンジョン攻略しにいくわよ。もう紬から言われたことはクリアしたから、上位入賞を目指しましょ!」

「うん!いこいこー!」

「おう!」


3人は気合を入れてまたダンジョン攻略へと駆り出した。

そんな3人のことをみんな避けていく。


「やっぱ避けられるの悲しいな……」

「迅くんーいくよー?」

「お、おう!今行く!」


明るい性格の迅には避けられるのは相当なダメージの様だった。


「……悲しいわぁ……」

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