バグでダンジョンマスターになったけど、普通にプレイしてもいいよね?

ユルヤカ

「ゲームスタート編!」

プロローグ エンチャンターと設定

「やっとこの時が来たぞ…」


届いた段ボールの中のゲームのパッケージを見て、縁結紬えんむすびつむぎは笑みを浮かべる。


「さてと、設定するか」


紬はゲームのソフトをハードに入れて、頭に装着する。

紬が始めようとしているのは、ここ最近話題となっていたVRMMOゲームの「dungeon Online」で、発売から1ヶ月経ってようやく買うことができたものだった。

装着して数秒も経たないうちに、紬の意識はゲームの中へと入っていった。


◻︎ ◻︎ ◻︎


紬は初期設定を1分も経たずに終わらし、ゲームの大事な初期設定である、キャラメイクに取り掛かった。


「名前は本名はダメなのか……。ツムグでいいや」


紬は名前をそんなに変えたくなかったため、最後の一文字を変えてツムグと入力して決定ボタンを押す。映し出されたウィンドウは、次に見た目の設定へと移り変わる。


「見た目は、リア友にバレたくないし……でも変えすぎてもな……うーん……」


紬は散々迷った結果、目の色を青に変えて雰囲気を変えるだけにした。

身長を少し高くして誤魔化そうとしたのだが、VRMMOゲームは動作の関係で身長を変えることができなかった。


決定ボタンを押すと、再びウィンドウが映し出す内容を変え、ジョブとスキルの選択画面になる。


「ジョブかぁ……剣士とかシーフみたいな前衛職は苦手だしな……普通に魔法使い系でいいか」


紬は魔法使いの枠を選択し、魔法使い系のジョブの一覧を見る。

そこに映し出されたのは、100を超えるジョブの名前だった。


「すごい数だな……うーん…一応全部見るか」


順番に一つずつジョブを確認していく。しばらく見ていると、紬の目に一つのジョブの名前がとまった。


「えっ……エンチャンター?」


エンチャンター。味方にバフをかけたり、敵にデバフをかけたりしてサポートする、サポート特化のジョブだ。

紬が驚いているのは、このゲームにエンチャンターがないということが、テストプレイの時にリークされていたからだった。


何一つ情報のないジョブは危険な一方で、無限の可能性がある。

その魅力に取り憑かれた紬は、衝動的にジョブをエンチャンターで決定した。


「次はスキルか……エンチャンターにあったスキルを探さないとな…」


エンチャンターにあったスキルは、味方にかけるバフを強くするためのスキルなどだろう。しかし、紬はエンチャンターにしたものの、ソロでこのゲームを楽しむつもりだったため、一人でも戦えるスキルを取る必要がった。


「ミスった……エンチャンターは一人でやるジョブじゃなかった…」


紬は、自分が大きなミスを犯したことに気づいた。もう決定してしまった以上、手遅れだったが。


キャラメイクをやり直すことも考えた紬だったが、とりあえず試してみようと使えそうなスキルを3つ適当に取り、決定を押した。


ウィンドウは次にステータスを映し出し、ステータスポイント残り100と表示した。ジョブとスキルを決めた次に待っていたのは、ステータスポイントの割り振りだった。


「まぁ、とりあえずMPに10とDEXに40と……あとどうすっかな」


ステータスポイントをどうせ後でやり直すし、とMPに10、DEXに40、AGIに20、INTに30振り、決定を押した。


「とりあえず、未知のジョブを見てみますかー」


設定を終えた紬の体が光に包まれていく。

次に目を開けると、そこは薄暗い洞窟の中だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る