『 』
私の心と体には空白がある。
いいえ、そこだけ欠けている。
つまりないのだ。
ないものは仕方がないとあきらめていた。なのに、必要に迫られる日が来るとは思わなかった。
ロキタンスキー症候群、つまり生まれつき子宮が欠損しているのだ。移植を受ければ子供を産むことが出来るが、母親のそれは子宮筋腫で全摘していたのだ。
なので、恋愛も、結婚も、基本的に諦めるように両親から言われていた。
私は自分を殺すことで自我を保ち、独りで生きる道を模索してきた結果、男性からのアプローチは全て断った。
葉山竜成、彼が現れるまでは。
「由貴さん!僕と付き合ってください!」
「嫌です」
「何故です!?」
「別に意味はありません」
私は塩対応を繰り返し、何度も何故も彼を往なした。
「由貴さん、一緒に帰りましょう!」
「嫌です」
「途中までで良いですから!」
「嫌です」
彼はしつこいですが、最後はしょんぼりして帰ります。
気の毒ですが、私には関係ありません。
「由貴、葉山君のこと嫌い? 私、わりと良いと思うんだけど?」
「貴子、あんたは私の事情を知ってるでしょう?」
「じゃあ、それも話してみたら?」
「私は全ての可能性に興味がないの。あまりしつこく言うならあなたとも縁を切るわ?」
「ごめん⋯⋯」
ううん。貴子は悪くない。きっとわたしを想って言ってくれているのだろう。悪いのは私。心も体も欠落している私が悪いのだ。貴子が感情の起伏が少ない私なんかの友達でいてくれる、それだけでも有り難い。
「由貴さん!」
「何?」
「僕と友達になってください!」
「⋯⋯」
「断らない、と言うことは了承と言うことで良いですか?」
「あんたももの好きね?」
「いえ、由貴さんを好きなだけです」
「⋯⋯ばか」
「はい!僕、バカみたいに由貴さん好きなんで!友達になれて嬉しいです!」
彼と友達になって、貴子と三人で話すようになった。
話してみれば気さくな性格で、存外楽しかった。でもそれだけだ。
やがて大人になり、貴子は結婚して会うことも少なくなり、私と彼は結婚もせずによく会っては話をした。
「あんたももの好きね?」
「由貴さんが好きなだけです」
彼は変わらない。
ただの友達として彼は最高だ。
今では私の事を一番理解してくれる
「ねえ」
「はい」
「結婚、したくないの?」
「僕は由貴さんと一緒に居れればそれで幸せです」
「そう」
「はい」
彼の肩に頭を乗せる。
「このままでも、いいかしら?」
「はい」
こんな関係も悪くないと思った。
了
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