第27話 心がズキンと痛み出す瞬間
授業終わりのチャイムが鳴ると、耀汰は机にうなだれた。どこで拾ったか分からない白く小さな草花の花びらを取り始めた。お約束のスキキライ占いをし始めている。
「あの人は……俺のことが好き……嫌い。好き……嫌い……」
「なぁ、耀汰。その花さ。かなり花びら多くない?」
「ちょ、黙ってて。俺の占いはまだこれからだから。好き……嫌い……」
「それって、シロツメグサでしょう。それで花占いしてる人見たことないんだけど」
「ああ、確かになぁ」
耀汰の横で話していたのは、瑛斗と琉凪だった。何を考えているのかわからなくて、付き合いきれないなと思い始める2人だ。今回は静かにバッグを肩に乗せて立ち去ろうとした。
「あ! やったー。最後は好きだってよ。やった! ほら、瑛斗。俺、好かれてるわ」
「……そうか。良かったな。んじゃ、先帰るぜ」
「え……瑛斗、今日は部活行かないのか?」
「今日は、ちょっと用事あるからな。んじゃぁ、気を付けて帰れよ」
いつもの調子と違う瑛斗に耀汰の心が張り裂けそうになった。恋人でもない。友達以上の関係にヒビが入る瞬間だった。琉凪はしっかりと瑛斗の腕をつかんでいた。2人でべったりくっついて歩くのを見るのが珍しかった。耀汰は複雑な気持ちになり、一度立ち上がったが、すぐに座り机の上にぐったりと腕に顔を埋めた。
「みんなして、俺のこと冷たくするんだよな……ちくしょ……花占いが好きになっても寂しいじゃんかよ」
涙が出そうなくらいに落ち込むと、一人の女子生徒がひょっこり耀汰の顔を覗きに来た。
「耀汰くん。いつも君はかっこよくて人気者なんだから。そんな寂しい顔しないでよ?」
「……え? 君って確か、俺のファンクラブを作ったっていう?」
「そ、そうよ。私がファンクラブ会長の
「ファンクラブ……ちなみに会員数って今どれくらいなの?」
「会員も何もこの学校の全女子生徒よ。みんなが君を支持してるから」
「え? 嘘だぁ。そんなの聞いたこと無い」
「ま、私が管理しているからね。声を掛けたらすぐに来るわよ。ね! みんな?」
ドヤ顔を見せる鴨下 芽依は教室にいる女子に声を掛けるとごく一部の生徒だけ頷いた。耀汰はその様子を見逃さなかった。
「何か、怪しい。適当に言ってるだけじゃねーの。証拠もないし。そもそも、アイドルのファンクラブじゃないんだから会費なんて取ってないでしょ?」
「え、ええ。まぁ、会費はかからないけどね。みんながあなたを支持するから絶対彼女にならないってルールは存在するけども……」
「け、出たよ。また、そんな変なルール。勝手に決めるなって。俺が誰と付き合おうが、好きになろうが、ファンクラブは関係ねぇだろ?!」
怒りのスイッチを入れた耀汰は、机をバンッとたたいて、きつく鴨下 芽依を睨みつけると、教室から出て行った。空気が一瞬重くなった。教室内に残っていたクラスメイトたちはざわつき始める。
「……全く、なんなの。ファンクラブなんて普通誰も集まらないってのに。私は何のためにやってるんだか、わからなくなるわ!!」
本当ならば、鴨下 芽依本人が猛烈に堀内 耀汰のことが好きであるが、本音を誰にも話したことがない。敵を作りたくないだけだ。自分の想いを誰かに打ち明けたらと思うと恐怖でしかない。そんな気持ちからファンクラブを作り自分の心を守ってきた。でもそれがいつしか本人を傷つけていることを直接言われても気づいていない。
「もう、本当にイライラする!!」
よかれと思ってやったことに腹を立てられて、自分は悪くないと言い始める。元はと言えば、あの人が悪いんじゃないかと考え始めた。鴨下 芽依は、またいじめのターゲットを見つけ始める。
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