第2話 予想外の関係性
耀汰は図書室の前で落ちた冊子を拾い、彼女の言葉に唖然とする。まさか、名前も知らなかった彼女が同じクラス。廊下で見かけると、教室で見るのと何が違うのか。今までどこを見ていたのか。次の時間は国語の自習で図書室にある指定の本を読んで感想を書くという時間。学級委員長の彼女が図書室に本を借りに来ていた。クラス全員分の28冊。小さいサイズのA5であっても全部持つのは大変で重い。耀汰とぶつかった際に、廊下に本を全部落としてしまった。散らばった床の上で一瞬固まったが、すぐに行動して拾って重ねた。
「拾ってくれてありがとう。ごめんね。ドジばっかり……一人で全部やるからいけないんだけどさ」
初めて真剣に彼女の声を聞いた気がする。耀汰は同じクラスだと思っていなかったため、何もかもが新鮮だ。耳がチーズのようにとろけそうだった。彼女の髪色が真っ黒じゃなく、綺麗な茶色だったことに驚いて目がハートになったようにぼんやりしている。
「――ねぇ、聞いてる?」
「え、ごめん。聞いてなかった」
「もうすぐ授業始まるから……私、行くね」
拾った本を全部丁寧に重ねて持ち、早々と駆け出す彼女に耀汰は声を掛けようとしたが、何だか自信が無くなって、伸ばした手をひっこめた。言いかけた口を閉じた。モヤモヤした気持ちが残る。三つ編みの髪を揺らして、彼女は階段を駆け下りる。
すると、後ろから
「おーーい。耀汰、そこで何してるんだよ」
「あぁ?!
「……俺、学級委員長。こう見えてもな。さっき行ったでしょ。
クラスでいつもグループを組んで過ごしている真叶がジェスチャーをして、耀汰に彼女の説明した。名前を知らなかった一目惚れをした眼鏡の女子は、
「さっきの人、
「何カ月同じクラスしてんだよ。お前、今まで気づかなかったの? もう半年過ぎたぞ?」
「……ああ。知らなかったな」
「お前は興味ないもんなぁ。女に。いっつもスマホのゲームばっか見て、二次元の彼女だーって言ってるからそういうことになるんだよ。モテ男のくせよぉ!!」
真叶は、耀汰の腹をグーパンチで軽く殴ってくる。不意打ちのことで地味に痛かった。
「殴ることはないだろ。殴るの、良くないって!!」
「はいはい。いい加減、彼女の一人くらい作って童貞卒業しろよ」
「はぁ?! お前に言われたくないやぃ!」
「俺は、卒業してるしぃ? ……今は彼女いないけどな。モテないけど」
「嘘だぁ。もっさいお前が?」
「もっさいって言うな! 俺はもっさくない。インテリで優しいの」
「どこがだよ。なんでさっきの本を一緒に持ってあげなかったんだよ。優しい人なんだろ?」
「それは、彼女が自分で持つから大丈夫って言うからさ」
「……ふーん。彼女の意見を尊重したってこと」
「そ、そういうこと。俺、優しいだろ」
「どうだか……」
真叶は不機嫌な顔をして、階段を下りて行った。耀汰はその後を着いていくが、何となく、やりきれない気持ちが残った。自分が学級委員長をしていたら、そんなこと無かったのになぁと考えてしまう。
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