『別に』の奥にある気もち〜俺は隣にいるだけ〜
一茶坊
第1話 ムカつく野郎
「大輝くん、今日もカッコイイね! 」
「大輝くん、昨日の番組見た?」
「大輝くん、ぶっちゃけ彼女いるの?」
楽しそうに女子が話しかけてくる
―黄色い声に囲まれている俺は''大輝''ではない。
俺の名前は、みなと
大輝の隣で荷物持ちをしているだけ。
笑っている女子たちの視線は、全部、大輝に向いている。
俺は、質問の合間に「うん」とか「へえ」とか相槌を打つ。
まるで、インタビューの補助スタッフみたいだ。
でも、大輝は答えない。
いつも通り、少し笑って、黙っている。
俺は、答えたくても聞かれない。
大輝は、聞かれても答えない。
それが、俺たちの距離だ。
大輝は一言だけ言う
「俺らもう帰るからじゃあね」
適当に女子の会話を打ち切り歩き出した
俺は不機嫌になりながらついていく
「なぁ、お前もうちょい愛想よくしたら?
せっかくモテてるのに。」
大輝は目線を合わさずに答える
「別に興味無いし。
みなと、あの中に気になる女子いたの?」
「いや、特にそういうわけじゃないけどさ…。」
「じゃ、別にいいじゃん」
大輝の涼し気な顔が、なんだか鼻につく
俺と大輝は母親同士が親密だったこともあって、小さい頃からよく遊んでいた。
中学に上がるころくらいから、
大輝は目立ち始める。
成績優秀、スポーツもできる。
顔も良い。
俺がどれだけ考えて、コイツに意見しても、大輝が「別に」と一蹴すれば、それまで。
きっと世の中は大輝を支持するだろう。
俺はずっとモヤモヤしている。
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