未来に託すボール

おい、バカ。

泣くなよ。俺がいなくなったくらいで。


……なんて笑い飛ばせたら、どれだけよかったか。

本当は俺だって、すげぇ悔しいんだ。

でもな……きっとお前なら分かってくれるって、信じてる。


あの日、俺たち約束したよな。

最高の舞台に立とうって。

二人で絶対、みんなを連れて行こうって。


それなのに果たせなかった。

まじで、ごめん。


俺だって、こんなことになるなんて思ってなかったんだ。

だから、なぜか知らないけど、この紙とペンには触れられるから――

せめて、これだけは伝えさせてくれ。


――約束のこと。


これが一番悔しい。

どれだけその日を望んでたか、お前には分かるだろ?

それが叶わずに、時が止まってしまった。

壊れた時計みたいになって、俺だけがあの日に置き去りなんだ。

つれぇよ……。


けどな、それでも楽しい思い出の方が多かった。

一緒にバカみたいに笑った日々を、俺は感謝してる。

辛い練習も、お前とだったから乗り越えられた。


だから――忘れるなよ。

笑え。俺の分まで笑え。


そして、生きろ。

俺の分まで、全力で人生謳歌しろ!


じゃあな、相棒。


スターになったらさ、空に届くくらいまでサインボールを投げてくれ。

その時は、きっと俺も空のどこかでキャッチしてやるから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る