第18話 恋人ってなにするんだっけ?《なのか視点》
《愛染なのか
――恋人って、なにすればいいんだろ?
私とハジメは昨日、恋人同士になった。
ハジメが私に告白してくれたから。
……正直、まだ信じられない。
ハ、ハジメが、私に告白してくれたなんて……!
全然実感が持てない。
まだ夢の中なんじゃないかって思うくらい。
でも――ちゃんと現実なんだ。
え、えへへ……。
こ、これでもう〝負けヒロイン〟卒業かな~……なんて――。
……。
…………。
………………。
……だけどハジメと恋人になったら、私なにをすべきなんだろう?
と、とりあえず
でも用事もないのに連絡するのも……。
……。
…………。
……いや、私たちって普段、特に用事もないの
なんで恋人になったら逆にメッセージを送りづらくなっちゃうのよ……。
ハァ、と部屋の中でため息を漏らす私。
……〝恋人になった〟というだけで、やっぱり妙に意識してしまう。
どうしてもハジメのことばかり考えてしまう。
それも、いいことも悪いことも。
――今、ハジメはなにを考えてるかな?
――今、ハジメはなにをしてるかな?
私と同じように悶々としてくれてるのかな?
それとも、こんな風に考え込んじゃうのは私の方だけ?
「う~~~……もうっ、悩んでたって仕方ない!」
思い切って、私はスマホを手に取る。
そして
そしてできた文章が、
『今なにしてる?』
――この一言。
……結局あまりにも、あまりにも普段通りの一文が完成しちゃった……。
うぅ……こんなの付き合う前から送ってる暇潰しのメッセージとなにも変わらないよ……。
でも変に意識しすぎてるって思われるよりはいいかもだし……。
うん――よし――。
とりあえず――送っちゃえ。
私は少しだけ躊躇しながらも、
すると――すぐに返事が戻ってくる。
『暇してる。暇暇~~~』
私もすぐにメッセージを戻し、
『ホントに暇?
やることない?』
『ないないないないない』
『ないは一回でいいから』
『🥺』
「――クスッ」
私は思わず、小さく吹き出してしまった。
――いつも通りだ。
本当にいつも通りのハジメ。
それにこの中身のないメッセージ送り合うのも、いつもの私たち。
なんだか少し、モヤモヤが晴れた気がする。
……でもこの後、なんて返そう?
私はちょっと考えて――ふと思い付いた。
「……デ、
――ハジメと〝デート〟したい。
せっかく恋人同士になったんだから、ちゃんと
今日は休日だし、ハジメも暇してるって言うなら……。
で、でもデートへのお誘いなんて、そんな簡単にしていいものなのかな……?
それに、私たちの初デートにもなるワケだし……。
そもそも、ハジメだっていきなり誘われて迷惑だったりも……。
う~ん……。
うぅ~~~~~…………。
私は悩みに悩んで悶絶し、自分の身体をベッドへと放り投げる。
そして枕に顔を突っ伏し、また悶々と考えた後に――再びスマホに文字を入力。
『窓』
――その一言だけメッセージを送って、すぐにベッドから立ち上がる。
やっぱり直接会って、自分の言葉で誘いたいなって――そう思ったから。
そして、中学一年の時にハジメに着替え中を見られて以降、もう五年くらい閉じたままにしてあったカーテンをシャッと開く。
さらに窓を開け――そのすぐ向こうにあるハジメの部屋の窓を〝コンコン〟とノックした。
――すぐに向こうの窓のカーテンが開かれ、ハジメの姿が見えた。
ハジメは自分の部屋の窓を開けて、
「おはよ、なのか」
そんな風に、自然に私に挨拶してくれる。
「……おはよう、ハジメ」
「なのかが
「う……そ、それは、
微妙に気まずさを感じて、私は自分の長い金髪をクルクルと指先で弄る。
こうやってお互いの部屋の窓を挟んで会話するのも、もうかなり久しぶり。
なんだか幼い頃に戻ったみたい。
……中学一年の時に私の下着姿を覗いたことは、流石にちょっと根に持ってるけど。
で、でも今だったら恋人同士なんだし、ハジメにならいくら見られてもいいかも……なんて……。
――って、違う違う!
なに考えてるの私!?
は、早くハジメをデートに……!
「わ、私たち、もう恋人同士、なんだよね?」
「あ、ああ」
「それでその……今日って休日でしょ?」
「休日、だな」
「だ、だから――〝デート〟なんてどうかな……なんて」
――この後、私は〝人生初のデート〟にハジメを誘うことに、無事成功した。
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