魔力を持たない劣等非民だと思った?残念、悪魔と契約した最強の術師です〜隠してきた力を解放したら急に権力者の仲間に入れられました〜
マッツィーニ〜ひよこ作家〜
番外編 〜かくして勝利は我が帝国に〜
===前書き===
※地の文が多いので、ちょっと読みづらいです。読み飛ばして貰って大丈夫です。大東陽帝国(日本)が勝ったことだけ覚えておいていただけますと幸いです。
この作品はフィクションですが、本エピソードに関しては太平洋戦○を意識して読むと分かりやすいと思います。
大東陽帝国→大日本帝○
アストリア連邦→アメリカ合衆○
天青島→硫黄○
みたいな感じです。
注)私は戦争に反対しています。
戦争、ダメ、ゼッタイ!
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1945年8月1日午前1時53分。
第二次世界魔術大戦の終結まで、残り14日。
その被害は想像を絶し、軍用機はおろか、航空基地や港湾施設、さらには周囲に建造された全ての設備が徹底的に破壊され尽くしていた。
天青島は連邦軍が
さらには、本土攻撃計画そのものが実行不可能になる可能性をも孕んでいた。
同日、午後3時17分。
この事件を受け、連邦軍本部は直ちに事件の全容解明を指示した。
しかし、生存者は一人もおらず、調査は困難を極めることとなった。
ただ、事件直前に天青島沖合約200キロの地点で停泊していた連邦軍の巡洋艦が、伝令術式を通じて緊急通信をキャッチしており、それは東陽軍の夜襲を知らせるものだった。
また、島内には東陽軍の航空兵とみられる数体の死体が確認され、これらの証拠から、この破壊行為が東陽軍によるものであると断定された。
だが、東陽軍がこれほどまで徹底的な攻撃を実行できた理由、そして一夜にして軍事拠点を完全に壊滅するまでに至った詳細は、依然として謎のままである。
島内に(東陽軍を含めて)生存者が誰一人いなかった意味も、
東陽軍航空兵の死体が異様なまでに綺麗だった意味も、
彼らの腕章に『神風』という記号が刻まれていた意味も、
この時の連邦軍は何一つ理解していなかった。
1945年8月5日午前7時24分。
第二次世界魔術大戦の終結まで、残り10日。
いずれの舟艇も、連邦軍の軍艦に対して直接的な打撃を与えるような武装は備えておらず、兵士を運搬するためだけに設計された小規模なボートである。
舟艇は、サンレア沖に配備されていた連邦艦隊を目標に、静かに南下を続ける。
だが、完全な奇襲には至らなかった。
連邦軍の索敵術式が敵艦の接近を感知し、連邦軍航空部隊がただちに発進。
連邦艦隊を守るため、これらの舟艇を撃滅するべく急行した。
接近する敵艦の規模から、大東陽帝国軍の目的は航空兵による小規模な奇襲であると推測された。
そのため、迎撃に出動した航空部隊は、航空兵の撃墜に特化した広範囲殲滅術式を搭載した戦闘機3機と、それを補佐する約30名の航空兵で編成されていた。
連邦軍航空部隊は、敵艦に向けて一直線に飛行した。
接敵目前。
彼らの前に現れたのは、近代戦には不釣り合いな湾刀を一振り帯刀した航空兵。
―――たったの1人だけだった。
「バカか、時代錯誤にもほどがある!」
「敗北を重ねすぎてついに頭がおかしくなったのか?」
連邦軍の航空兵は信じられないと目を見開き、驚嘆を口にする。
『武士道と云うは死ぬことと見つけたり』。
確かに、大東陽帝国軍人は降伏するくらいなら死を選ぶ人種ではあったが。
圧倒的なリーチと面での殲滅力、一撃の破壊力がものをいう近代戦において、『刀一本』で戦闘に臨むなど正気の沙汰とは思えまい。
思えまいが、情けは無用。
戦闘機は速度を上げ、相対する1人の勇敢で愚かな東陽軍航空兵めがけて広範囲殲滅術式を発動した。
放たれた特大サイズの火球が凄まじい速度で弾け、無数の炎片となって触れるもの全てを飲み込むように広がっていく。
熱波と衝撃が空間を歪ませ、あたかも空そのものが燃え盛るかのような壮絶な光景が広がった。
広範囲殲滅術式を前に、防御術式を持たない航空兵は無力である。
それが現代航空戦の常識であり、抗うことのできない事実。
そのはずだった。
「死体が確認できない、どこだ!?」
いつもなら、真っ黒に焼けた人体が力無く落下していくはずなのに。
進行を止めて見下ろすが、どこを探しても見つからない。
それもそのはず、答えは『はるか上空』だから。
太陽の光を遮る一筋の影が、彼ら連邦軍航空部隊に差し込む。
東陽軍航空兵は誰も気付けないほどの速さで上空に移動していた。
気づいた時には、
東陽軍航空兵は今にも飛び掛からんと刀の柄を力強く握りしめ、前傾姿勢のまま憤怒の形相で敵戦闘機を睨みつけていた。
次の瞬間、
東陽軍航空兵は視認するのが困難なほどの速度で急降下し、
閃光のごとき一撃で戦闘機を一刀両断した。
爆音が轟き、戦闘機は火球となって墜落する。
驚愕が連邦軍航空部隊を襲う。
誰もが呆然とし、思考を停止する。
しかし、敵の一閃は待ってはくれない。
残りの戦闘機、そして航空兵たちも次々と斬り倒されていく。
抗う間もなく、血飛沫が空に舞う。
味方を全員打ち取られ、
最後の一人、ニック少尉は必死の形相で伝令術式を起動した。
「こちらニック少尉、至急、増援を頼む!」
術式越しに返答が入る。
「どうした、何があった!」
「チクショウ、もう俺しか残っていない!敵は―――」
絶対的な死の1秒前。
ニック少尉が見た最後の光景は、赤い瞳で睨みつける―――。
「―――悪魔だった」
最後の言葉とともに、鋭い刃が閃き、彼の体が真っ二つに裂けた。
敵航空部隊をすべて迎撃した東陽軍航空兵は単独でそのまま前進。
最終的に敵艦4隻(空母1隻、護衛空母1隻、駆逐艦2隻)を撃破した。
「大東陽帝国、万歳」
4隻目を両断した航空兵はその時点で自身の魂をすべて燃やし尽くし、無限に広がる青い空を仰ぎ見ながら、愛する祖国に最後の激励を送る。
彼もまた、数多いる戦死者の1人として、
同胞と敵国兵がともに眠る海の底へと消えていった。
同日、1945年8月5日午後2時9分。
第二次世界魔術大戦の終結まで、残り10日。
東陽軍航空兵の電撃的な強襲によって甚大な被害を受けた連邦軍サンレア島支部は、混乱の極地を迎えていた。
東陽軍の航空兵を乗せた舟艇6隻が、もうすぐサンレア島に到着する。
敵は100人にも満たない航空兵なれど、
その戦力は現在の常識を遥かに超えている。
まさに悪魔の軍勢だった。
一度島を捨てて戦線を後退し、体勢を整えるのか。
今ある戦力をすべて投入して、これを迎撃するのか。
参謀本部では熾烈な議論が繰り広げられた。
そして最終的に、
連邦軍サンレア島支部は全霊を持って敵国兵を迎え撃つこととなった。
撤退するにはあまりにも時間が足りなかったからである。
戦闘の結果は、大変無惨なものであった。
連邦軍の被害は、空母7隻、護衛空母8隻、高速戦艦5隻、重巡洋艦4隻、軽巡洋艦7隻、対空巡洋艦3隻、駆逐艦58隻、兵士約18万人、基地全壊と、サンレア島に配備されていた連邦軍ほぼすべての戦力が灰燼と化した。
一方で、東陽軍の被害は航空兵19名のみだった。
1945年8月6日午前3時23分。
第二次世界魔術大戦の終結まで、残り9日。
サンレア島での歴史的大敗の報は、瞬く間にアストリア連邦本国へと届いた。
この報告を受け、大統領と側近2名の計3名が極秘会談を行い、戦争を続けるべきか、和平交渉へ舵を切るべきかについて議論を重ねられた。
そして最終的に、和平交渉の準備に向けた草案作成が始まった。
だが、その数時間後、事態はさらなる動きを見せる。
本作戦は連邦軍を含む多くの外国軍がすでに退避していたため、被害を最小限に抑えつつ、迅速に制圧することに成功した。
この成功を受け、汐音湾港からは大量の軍人を乗せた艦隊が次々と出航。
新たに手に入れた領土を統治するための治安維持部隊が派遣された。
また、本作戦終了後も残存する東陽軍航空兵たちは、物資を補給するとすぐに北東方面へ進撃し、8月8日にはカリーナ郡島を制圧した。
これにより、
かつて連邦軍に奪われた島々は、再び東陽軍の手中に収まったのである。
1945年8月9日午前4時10分。
第二次世界魔術大戦の終結まで、残り6日。
アストリア連邦から和平案が提案される。
その内容は、
しかし、大東陽帝国の軍部は和平案を拒否する姿勢を示す。
彼らは戦線を拡大し、領土をさらに獲得する方が有益と判断した。
軍部は、アストリア連邦の国防圏を突破し、本土上陸を目指す案を提案。
議会もこれに賛成する。
こうして、天皇の最終的な判断を仰ぐための御前会議が開かれる。
会議は順調に進行し、和平案拒否は確定したようなものだった。
しかし、最終的な決定が行われる直前、
急速に勢力を伸ばしていた風神家一派が会議に乱入。
元老、主要閣僚、軍首脳が殺害されるという大惨事となった。
このクーデターによって、会議の結果は一転。
鉄の臭いが充満する血に染まった会議室において、
全会一致で、和平交渉が開始される運びとなる。
1945年8月14日午後9時47分。
第二次世界魔術大戦の終結まで、残り1日。
最終的に、龍興国の建国と温海諸島の統治が承認されるとともに、
同時に、連邦国からの支援を失った紅夏民国も和平交渉を模索する。
しかし、翌日の未明、紅夏民国の拠点である
曇天の下、廃墟と化した野外の一角で、
紅夏民国政府は大東陽帝国の出した和平案を全面的に受け入れることとなった。
かくして、1945年8月15日午前6時56分。
第二次世界魔術大戦は予想外の結末を迎えることとなった。
大東陽帝国の敗北を覆したのは、現風神家当主・
彼の固有術式は、契りを交わした者に『魂を魔力に変換する術式』を付与するものであり、命と引き換えに絶大な力を手にした航空兵、通称『特別飛行第零戦隊』、またの名を『人柱兵器・神風』による決死の自爆攻撃が大東陽帝国に勝利をもたらした。
戦争終結の同年、風神京秋は天皇より征夷大将軍の位を授与される。
軍部と議会、すべてが彼の手中に収まり、事実上の独裁体勢が敷かれた。
広大な領土と、豊富な資源、そして、人間という『エネルギー』を手に入れた大東陽帝国は、世界で最も影響力のある覇権国家として歩んでいくこととなる。
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